付き合って四年目ともなるとどれだけ好きな相手でもやはりトキメキを感じることなんて日に日に減っていく。
彼の一挙一動に胸を高鳴らせていた時のことが懐かしい、そう思いながらも
夏真っ盛り、エアコンの効いた部屋で白い
ネットや雑誌を見ながら帯を結ぶ。
それだけで髪を上げたうなじが汗でほんのり湿る。
外では沢山のセミが短い青春を謳歌しようとけたたましい音を上げて鳴いていた。
「かわいい?」
「うん、かわいいかわいい」
「人間、本当のことは一回しか言わないってCMでやってたよ」
「へぇ」
昼間は驚くほどいたセミがまるで嘘のように鳴りを潜め空の赤に紫が入り始める頃、二人は他愛もない話に花を咲かせながら神社へ向かう。
まだ祭には少し早かったようで道の端では多くの屋台が機材を運び込んだり小さな立て看板を用意している所だった。
「早く来過ぎたかな」
「楽しみだったからつい…ねぇ、せっかくだしおみくじでも引かない?」
人気のない境内にぽつんと立つ小さな赤い箱を指さし美緒は100円玉を二枚取り出す。
カラカラと下駄を鳴らしてまるで子供のように販売機へ駆け寄る後ろ姿を
「吉、だって」
「良いじゃん、俺 末吉」
「普段の行いが悪いからだね」そう言ってケラケラ笑う美緒に「うっせ」と小さく返して近くの紐に結びつける。
以前は木に結んでいたおみくじだが、最近では植物を傷めないようにとこのように紐を何箇所にも張って結ぶ場所を指定されるようになった。