秋らしい肌寒い夜、ミユキとカズキは少し恥じらいながら週末の賑やかな夜の街を歩いていた。
街灯や店の看板から発せられる様々な色の光が、夜の闇を大人らしい上品な、しかし無邪気な鮮やかな様子が人々の心を引き込んでいた。
そのなかを二人は仲良く話しながら長いこと歩いていた。
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「ケンゴのやつ、大丈夫かな?」
「すごい飲んでたからね。でも大丈夫じゃない? タカシ君とかも一緒だから」
二人はさっきまでいた居酒屋での久し振りの再会から感じた懐かしさや新鮮さにウキウキしながら、ケンゴの飲みっぷりを評していた。
「でもミユキも変わったよな。あの時からとても垢抜けたよな」
ミユキはそれを聞くと、思わずうつ向いて耳を赤くした。
カズキはチラッとその様子を見て微笑んだ。
「カズキもすごい変わったよ」
「そう?」
「うん。顔つきとか、すごく大人らしくなったような気がする」
そう言いながらミユキはグラウンドで大きな声をしながらサッカーの練習をするカズキの姿を思い出していた。
汗で髪の毛がグチャグチャになっても、それがその端正な顔になんらの瑕疵とはならず、それどころか美しくさえ見えた、カズキのユニホーム姿が鮮明に浮かび上がった。
二人は間もなく夜の街のはずれまで来た。
そこにはラブホテルが建っていた。
ちょうど夜の光に隠れるようにして、ひっそりと佇んでいるのが、さすが安いところではなく、いかにも上品で妖艶な感じを与えた。
二人は特に何も言わずに目だけで合図をすると、そのなかへ入った。
「ひゃっ!」
部屋に入ってすぐのところで、ちょうどドアを閉めたカズキに肩を叩かれ振り向くと、急にガバっと抱き締められてキスをされた。
「どう? びっくりした?」
ミユキとカズキは顔を近づけたまま笑った。
二人は少し酔っていた。
キレイだな……。
ミユキは間近でカズキの顔を見て、その高く通った鼻とか、よく整った眉毛とか、引き締まった唇とかよりも、まっすぐ自分の目を見つめるその大きな瞳に魅入られた。
それは思っていた以上に潤っていて美しかった。