アキとやり直す。
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………
私がこの十年ずっと、望み続けていた言葉だった。
私も彼も、大事なところで素直になれない。
そんな損な性格のせいで、十年も回り道してしまっていた。
「本当にいいの?」
「何が?」
「あたし、バツイチだよ?」
「そんなの関係あるとでも?」
「私がばかだった」
私の質問に対して、彼があまりにもあっけらかんとした表情をしていて、私は思わず笑ってしまった。
「アキは、変わらないね」
「そうかな?自分のことは分からないや」
彼はこの店に入るときに行ったのとまったく同じセリフをおどけたように言った。
もしかすると彼もまた、十年前よりいじわるになっているのかもしれない。
でも、それも悪くない。
そんなふうに思えている自分がいることに気付いていた。
「この後どうするつもりだったの?」
「いくつかパターンはあるけれど、刺激的な奴と、そうじゃない奴のどっちがいい?」
「前者」
「わかった、ならこの後は僕に任せて」
彼はそういうと、さらりと会計を済ませて(彼は私に財布を出す隙すら与えなかった)店を出た。
彼の足取りは迷いがなかった。
「あ、ここ……」
「覚えてる?」
「うん。そうか、ここだったんだね」
待ち合わせの駅が、いつも待ち合わせていた駅と違ったからわからなかった。
その場所は、私たちが高校生のころたまに遊びに来ていた街だった。
「こんな近くにあったんだ」
「うん、あの辺りはほとんど言ったことなかったからね。気づいてなかった?」
「うん、全然」
私は元々こういう場所の把握が苦手で、何度か来たことのある場所でも、通ったことのない道を通るだけでまるで分らなくなってしまうようなこともあるくらいだった。
「じゃあ、この場所は覚えてる?」
「あ、ここって……」
そこは、私たちが初めて体を重ね合わせた、ラブホテルだった。