恋のはじまり

エリートくんとしちゃった

混乱している。

これはなんの罰ゲームだ!!??

「自宅住所は」

「ほんとにいいんだって!」

「迷惑ですか?」

―ズキン

「め、め‥‥」

―ズキンズキン

あたしは今何考えてる?

“迷惑ですか?”

それはこっちのセリフだよ。

こんな愚かな考えしかできない上司なんて、いらないものに分類されるんじゃないか?
………

………
「‥‥いいよね。アンタたちエリートはいつだって優遇される」

「‥‥‥はい?」

「なんだったらあたしの人生だってあげますが。あーもう、イライラする」

「素直になった方がいいですよ。それに、人生をあげたいくらいの皮肉さがあるんですよね?」

「素直だし!!」

「僕は和田さんにとって“迷惑”な存在ではならないといけない。そう思っているではないですか?」

「‥‥‥」

「何か反論は?」

 

素直‥‥‥ってあたしの苦手分野だ。

いつだって答えを求められてきたこの人生で、素直になっていいことなんか一度たりともない。

よくわからなくてグルグルしてくる。

 

「き‥‥‥嫌い!!アンタみたいなエリートは落ちこぼれの派遣社員の上司とかウザがるよね!けど、だから‥‥だからこそ嫌いなの!!!」

気が付けばあたしは涙を流していた。

なんで、よりによってエリートくんな年下にこんなに素直になってるの?

悲しい。こんな自分が―‥‥。

「こんなあたしなんか‥‥嫌いだって、迷惑だって言って!そしたら、あんたの上司をやめるから!!」

「‥‥‥あとは?」

「もう、ない‥‥‥から、帰る!荷物返して!!」

あたしはこいつからリュックをとろうとするが、あたしの身長154cmでは、178cmのこいつに敵わない。

「はい、お疲れ様です。帰りましょう」

「は!?」

「素直になるのはお疲れ様ですよ。自宅は‥‥‥ってこの手帳に書いてます?」

「勝手に荷物漁んな!素直になんかなってない!!」

「そこまでご冗談を。素直になってます。大丈夫、迷惑じゃありませんよ」

「アンタになにが‥‥‥」

「僕の名前知ってくれてます?さすがにエリートの僕なんか知りませんよね?」

「イラッ。知ってるよ」

「まだ僕なんかエリートの‥‥‥」

「エリートエリートってうるさい!!」

「名前呼んでください」

「‥‥‥は、は、」

「笑ってます?」

「うるさいわ原島!!」

つい、声が出てしまった。

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