町外れのとある
白いシャツに膝丈のスカートというラフな服装に軽く結んだ長い髪というシンプルな出で立ちは年頃の女性としてはいささか簡素にも見える。
それもそのはず、彼女は遊びに来ているのではないからだ。
大学が夏季休暇に入って一週間ほど立ったある日のこと、ミサキはバイトの休みを取り一人遠出していた。
気楽な一人旅などではない。
数日前に見かけた治験バイトのためである。
三泊四日で数十万という大金、最低賃金に近い今のバイトで汗水たらして働いていたらどれだけかかるかわからない高額な報酬のために周囲には田舎の実家に帰ると嘘をついてまでやってきた。
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(内容が内容なだけに本当のことは言えないよね…)
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メールで伝えられた待ち合わせ場所には真っ白で上等そうな、いかにも営業車といった風貌の車が一台彼女を待っていた。
その隣にはスーツを着た三十代後半と思しき男性が立っている。
男はあたりをキョロキョロ見渡しながら不安げに携帯を握っているミサキを目ざとく見つけるとカツカツと歩み寄ってきた。
「おはようございます、高島ミサキさんですか?」
「えっあ、はい!そうです」
「株式会社メディカルヘルストライの小林です。はじめまして」
「はじめまして…」
ビシっと着られた質の良さそうなスーツ、穏やかな物言いに優しそうな笑顔、清潔感もありいかにも信用できそうなビジネスマンといった好印象の男性は慣れた手つきで後部席にミサキを座らせた。
三泊四日分の荷物が入った小さなトランクも丁寧に車に載せられる。
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(媚薬のモニターなんて言うから少し警戒してたけど…案外大丈夫そう)
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そう、彼女が応募したのは女性向け媚薬のモニター。
当然後ろめたさや不安はあった…友人知人に知られたらなんて言われるかわからない。
だから心細さをぐっとこらえてたった一人でここまでやってきたのである。
いかにも研究所というような施設に連れて行かれてからはまるで健康診断のように休む間もなく身長体重を測り、血圧脈拍を診られ、検査着に着替えて検査検査検査のオンパレード。
ここまで体の隅々を調べられたことがあっただろうかと目眩がするほどだった。
平時のデータがほしいから、と性器のサイズまで調べられたのには参った。
ヒダの厚さにクリトリスの大きさまで…これが実名の書かれた他のデータと一緒にもし流出したら、なんて恐ろしくて考えたくもない。
ここの研究員の多くは白衣を着ておらず、医療ドラマで見るような半袖に長ズボンのラフな制服なのだが至る所から漂ってくる強い消毒液臭さと相まって異様な雰囲気を醸し出している。
しかしそれがいかにも医療的で、当初予想していたようないかがわしさを感じさせずそれがミサキのこの施設への信頼に繋がっていた。
周囲を眺めながらぐったりと長椅子に深く腰を下ろしたミサキに研究員の一人が声をかけた。
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「検査は一通り終わりました。