そんなあたしの手を引いて歩いたのは陽太くんだった。
あまり生徒が使わない西階段で、あたしたちは上がってしまった呼吸を整ええている。
なんで?
涙なんか流すことがない。
いや、流すわけがない。
だってあの日にちかったんだよ?
お母さんたちの前では泣き虫にならないって。
泣き虫になんか‥‥‥なりたくないのに‥‥‥
………
………
………
「美咲。泣きたいときは泣けばいいんだ」
大好きな彼からもらった許しのもらう。
「‥‥‥っ‥‥‥」
「泣けば次にいいことがあるから。変なプライドとか気にすんな」
「っう~‥‥‥‥‥‥」
あたしの中の、プライドというやつがはがれた。
ばらばらと降り積もって白くて雪に変わって
キン、と冷えた学校の階段に消えていく。
「あんま俺いないほうがいいだろ。じゃ」
このままではだめだ。
「や‥‥‥」
あたしは初めて、誰かにすがった。
今まで誰にも手のかからない子として育ってきたから、
今まで一人でも大丈夫のように生きてきたから。
けど、好きな人は‥‥‥
陽太くんだけは違った。
すがったあたしの手をしっかりとつかんで
あたしを大きな胸板で受け止めて抱きしめてくれた。
「‥‥‥言っとくけど、偽りじゃねー。俺は‥‥‥ずっと美咲が好きなんだ」
少しだけ照れているような声色で話す陽太くん。
この時にわかった。
無理を続けていることに限界がいていたんだと。
ゆなには悪いけど、あたしだってずっと陽太くんが好きだから‥‥‥
好きすぎでゆなにも誰にも渡したくないんだ。