恋のはじまり

伯爵様の言いなりに

わたくしは倉島鈴音くらおかすずね、と申します。

年齢はまだまだ幼くて、13と11か月。

そして14歳となるわたくしには、自分の人生というものはなくなります。

わたくしのこの時代では14歳で縁談をまとめて嫁ぎに行かなければなりません。
………

………

………

「鈴音お姉さま。良い殿方がいれば良いですね」

彼女は11歳のわたくしの妹。

「まぁ、お姉さまの縁談を祝福してくれるとは、幼いのに素晴らしいですわね」

「もちろんです!だって大好きなお姉さまだから!いくら‥‥‥」
………

………

「血がつながっていなくても、ね」

そう、わたくしとお母様とお父様は血がつながっておりますが、

妹の美琴みことはたったひとり、お父様の妾が残した子です。

なのでお二人はもう溺愛していて愛されております。

なのに実娘のわたくしには到底‥‥‥あ、いえ、止めましょう。

こんなお言葉で取り繕っても何にもなりません。

 

「ありがとう美琴」

「‥‥お母様。お父様のお身体の調子を見に行きませんか?」

「そうね、では鈴音も―‥‥‥「鈴音お姉さま、そういえば新しい殿方からの文が届いております。すぐにお返事された方がよろしいかと」」
………

………
邪魔されたくないんですよね。

美琴はわたくしを敵視しているのを感じております。

早く出て行ってくれないか、というのが本心なのです。

最初はわたくしも子どもながら納得いかず、両親ともにお話はしました。

しかしそれは“妄想だ”と逆に叱られたのです。

なので決めました。

このお家から離れようと。

わたくしを信じて、わたくしが信じれて、人生末路まで愛して下さる方を選ぶのです。

そうすればわたくしの人生も素晴らしいものに変わるでしょう。

それが一番の今のきざ
しです。
………

………
「‥‥‥わかりました」

わたくしは少し目線を落としながら一礼して、部屋へ向かうことにしました。

もうこのお家で幸せを感じることは一切ないとわかり切っております。

「良い縁談がありましたらご報告いたします」

「楽しみに待っておりますわ、お姉さまの縁談」

「‥‥‥」

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