何もかも、わからなくなった。
覚悟?なにそれ‥‥‥医者なんだから治してよ。
なんでおばあちゃんが死ななきゃないの?
だって、世の中には死んで当然の人だってたくさんいるじゃない。
それなのになんでおばあちゃんが死ななきゃないのかな?
この世の中はおかしいよ。
「‥‥由香‥‥‥ちゃん?」
「おばあちゃん‥‥」
「‥‥ふふ。なんて、顔してるの?‥‥‥そっか、先生から聞いたんだね」
「うん。おかしい。なんでおばあちゃんなの?」
「おかしい世の中を正したいって、言っていたのは、誰だったかしら」
‥‥‥あ‥‥‥。
「わたしはその子のその言葉が大好きなの‥‥‥。あぁ、いつか‥‥その子を育てればきっと、わたしが生きる、幸せになれると、ね‥‥‥」
あたしだ。あたし‥‥‥そうだった。
おばあちゃんが生きやすいような世のなかにしたくって、
だからあたしは親から自立しておばあちゃんのところで勉強して編集者の道に進んだった。
………
………
「そうだったね」
「あなたにはこれからすてきな未来が待ってるの。それはいづれわかるから、自分を大切にして待ってなさい‥‥‥。」
「そのすてきな未来にはおばあちゃんもいないと‥‥‥」
「いいのよ」
それからスゥっと寝息を立てて再び眠りに入った。
あたしはいったい今、何をしているんだろう。
言われるまでわかってたけどわからないままで、成長は止まっている。
あたしは馬鹿だ。ここまで言われないと気づかないなんて。
「よし、一から仕事しよう」
あたしは胸を張っておばあちゃんの病室から出て行った。
扉を静かに閉めると、目の前には山部くんがいた。
驚いているが山部くんはまだあたしには気づいていない。
若い女性と楽しそうに話をしていた。
「‥‥‥ん??」
なんだか自分の心に‥‥‥?
ちくりとした。なんだろうか‥‥‥この感じ。
「‥‥‥??会社戻ろうか‥‥‥」
踵を返してあたしは立ち去ろうとエレベーターに乗った。
閉まるギリギリで乗りたかった人が割り込んできた。
「すみま―‥‥‥え」
あたしは
「‥‥‥はぁ、はぁ。っとに‥なんていう、人なんだ‥‥‥」
「‥‥‥
「や・ま・べ」
「あーごめんごめん。邪魔しちゃった??」
「なんかありましたか?」
「へ?」
「ほんと、病院内なんだから走らせるなよ」
「!?あんた誰に向かって‥‥‥」
ため口聞いてんのか、と権力の名のもと言おうとすると、その口を山部くんの大きな手のひらでふさがれた。
「むーー!!」
「積もる話は下でしますよ」