恋のはじまり

素直になれない私…

「うーん」

あたしは頭を悩ませていた。

難しい悩み。

どうすべきであるか…

………

………

「なーに悩んでんの」

「!あ、美世」

彼女は高校時代からの付き合いの春田美世はるたみよ

美人だしモテるし、頭いいから昔から大人気だ。

そんな美世とは反対のあたしには、何もない。

たまに美世といる自分に悩むこともあった。

一度だけ、劣等感を持った気持ちをぶつけてしまった時があった。

素晴らしく可愛い美世は、初めてあたしの前で泣いたのだ。

泣いたのとい同時に乾いた音が響く。

痛みを感じたあたしは、叩かれた、と気づいた。

「…あたしの好きな高空茗子たかそらめいこの悪口はゆるさないから」

「美世…」

この事件以来、あたしは周りの目をそれほど気にならなくなった。

認めてくれたこの子がいたから。

だからこそ、幸せになってほしい。

誰よりも幸せになってほしい。

けれどもその幸せを壊しそうな厄介な人を見つけてしまったため、あたしは悩んでいた。

「春田ぁ~。主任が呼んでるぞ」

「んー?了解ー」

「!!!」

あたしは美世の手をつかんだ。

「美世、これからトイレ行くからついてきて!!」

「へ?どうしたの茗子」

「いいから!ちょっと呼びに来てくれた青木くん!主任にはあたしが連れてったって言っといて!」

「お、おぉ」

あたしはトイレなんて過ぎて裏庭に来ていた。

美世の左手は握ったまま離さずに。

なんでこんなことしてるんだろう。

あたしはただ、美世に悪い虫がこれ以上つかないようにしたいだけなのに。

「茗子」

「ん!?なに!!??」

「アンタさ…わかりやすいね」

「!?」

「主任が好きなんでしょ」

予想外の美世の言葉に口を開いた。

「主任があたしを呼ぶといつもこうなの、気づかない?」

「!!?ちちち違う!!」

「そういや同級生でアンタが一目ぼれした鈴木くん。鈴木くんが近くに来るたびに逃げてたよね」

あの頃はそうだった。

確かに好きな人からは逃げるタイプだった。

「違う!」

「安心しなさい。あたしは旦那一筋だから」

「わかってるよーー」

何を隠そう。

美世は一年前に結婚した奥様なのだ。

あたしが知らない中学の頃から付き合っていた同い年の男性、春田圭はるたけいさん。

長年の付き合いからの結婚で、周囲の人は「やっとか」という反応をしていた。

「そこの二人」

急に男性から呼ばれた。

その声は良く知る人物。

「お疲れ様です、清木すみき主任」

「お疲れ…どうした高空。顔色が悪いぞ。医務室いってこい。俺は春田に話があるからそのあとで行くからな」

「…嫌です」

下心見え見え。

美世は絶世の美女だからね。

それに具合なんか悪くないし。

「茗子。ごめんね。ちょっと話してからあたしも追いかけるわ」

「え、美世…?」

「今度茗子にも話すから、待ってて」

すごすごと立ち去る羽目になるあたし。

もう…知らない!

1 2 3 4 5
RELATED NOVEL

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。