「おかえり」
「ただいま」
再びベッドに上がった彼は紙袋から小さな箱を取り出し、その小箱を彼女に向けてパカリと開ける。
箱の中では指輪が一つ、小さなクッションの切れ目に差し込まれて輝いていた。
「これ、受け取ってもらえます?」
「指輪…これ、もしかして、結婚指輪?」
「婚約指輪です。結婚指輪は、式の時に」
「わぁ…嬉しい!ありがとう!」
シンプルなシルバーのリングには小さな透明の、恐らくダイアモンドかその類だろう宝石が埋め込まれている。
「どういう指輪を好むかわからなくて、若い女性の店員に聞いて買ったんですが…結婚指輪は一緒に選びましょう」
そう言いながら彼は左手の薬指にそのリングを通す。まるでなにかの儀式みたい、と美優は少し緊張してそれを受け、自分の指にぴったりおさまったそれを眺めた。
「憶測で買ったんですが、サイズが合って良かった」
「ありがとう…ところで、左手の薬指って結婚指輪をつける場所じゃないの?これ婚約指輪だよね?」
彼女の素朴な疑問に、彼は “婚約指輪も結婚指輪も左手の薬指につけるものなんですよ、結婚後は片方だけ付ける人も居れば重ねて着ける人もいるようです” と教えてくれた。
左手の薬指でキラキラ輝くサプライズプレゼントを眺めながら彼の腕の中で美優は結婚という言葉の響きに胸を膨らませていた。
- FIN -