「なに、探しもの?」
「うん、母子手帳……幼少期の予防接種の記録がわかるものが必要なの」
「……そうかよ」
一応は納得したらしいけれど、信用がないのか、私の後ろにつき
智が、アルバムが収納してある辺りを指すので、その引き出しを開ける。
「あ……見つかったよ。ありがとう」
こちらを
「あの、私、行くね。お母さんに『部屋のゴミ片付けきれなくてごめん』って伝えてくれる?」
「は?」
「じゃあ……
そそくさと母子手帳とキャリーを手にした――
………
………
「お前、マジで何言ってんの?」
「……え?」
「帰って来たんじゃねぇの?」
知らないうちに、こんなに背が高くなったんだな、なんて。
青ざめた智を見て、トンチンカンなことを思う。
あぁ、男の人だな、て。
「違うよ……私、今度転勤することになったから、家のもの引き上げなきゃって思って……」
「……っ!」
「ごめんね。平日のお昼なら誰もいないと思ったの。まさか、あなたと顔を合わせてしまうなんて思っても見なかった。もう
だから、手を離してほしい。
そう思いを込めたのに、拘束はキツくなる。
「……昨日」
「……え?」
「昨日、俺、高校卒業したんだけど」
「あ……そっか。そうなんだね……?」
と、いうことは、私が出て行って、ちょうどまる1年だったのかぁ、なんて。
それは、絶対智が欲している言葉じゃない気がするので黙っておく。
………
………
「……なんか、言うことねぇの」
「え……卒業おめでとう……?」
「チッ! クソかよ」
しばらく合わないうちにガラが悪くなったな……。
不仲な義弟から手を握られたまま、不機嫌丸出しで舌打ちされるときの対処法って
……逃げる以外にあるのかしら。
なんとか
壁に追い詰められ、上を向かされる。