夏も近づく7月の半ばは暑くもなく寒くもなく、服を脱いでも気持ちのいい気候だった。
シャツとショートパンツ、それから下着を脱いで、私は再びソファに腰掛ける。
今まで数えきれないほど彼の前で服を脱いできたのに、まるで初めて肌を見せるような緊張を感じてた。
彼はソファの向かいに用意した椅子に腰掛けてスケッチブックを開く。
私は肘掛けに軽く肘をついて、少しでもウエストを細く見せようとモデルさながらに腰をねじってポーズを取る。
「姿勢、それでいい?」
「うん」
「じゃ、始めるから…」
「…キャンバスじゃないんだ?」
「まずは下書きしてから」
「そう」
明るい日差しの差し込む場所で一糸まとわぬ姿になるというのは少し心細いけれど思いの外、非日常的な興奮をもたらした。
そんな私とは裏腹に彼は真剣な目で食い入るように見つめてくる。
服を着て真面目な顔をしている彼を見ていると自分が服を着ていないことが段々と恥ずかしくなってきた。
それでもドキドキしているのだから露出狂かマゾの気があるのかも、等と心の中で笑う。
「綺麗だ」
彼は改まったようにそう言うと鉛筆を動かし始めた。
大ざっぱにアタリをとっているのだろうシャッ、シャー、カリ、と紙を滑る軽快な音が部屋に響く。
今どこを見ているのか、どこを描いているのか…全てが彼の瞳と手の動きから読み取れた。
改めて私の体を見て、彼はどう思っているんだろう…
全体を眺めて、おおまかな線を引き、細部を書き込んでいく。
今まで欲しくてたまらなかった彼の強い視線に思わず体が熱くなった。
ただ見られているだけ、足は閉じているしいやらしいポーズを取らされているわけではないのに視姦されているようで火照りが止まらない。
胸の先端の尖りが仄かに疼いて硬くなるのが自分でも分かる。
彼はこれに気づいているかもしれない、そして心の中では淫乱な女だと思われてるかもしれない…そう思うと下腹部がキュンと甘い欲情を催した。
「…もうすぐ一時間だな、そろそろ休憩するか」
やっと体が動かせるその時間が来る少し前から私はもう足をモジモジ擦り合わせたくなるのをこらえるのに一生懸命で彼の顔を直視できなくなっていた。
私は手早くバスタオルで体を隠しソファに淫らな汁がついていないか確認してから立ち上がった。
そこまで垂れてこそいなかったものの太腿の付け根まで濡れている事に1人赤面して彼に見えないよう後ろ手でさっと拭う。
「ね、どんな感じで描けたー?」
羞恥心を誤魔化すような空元気でスケッチブックを覗きこむ。鉛筆で何重にも線を書き込まれたソファに横たわる裸の女、彼の手で描かれた私がそこにいる。