私、
それはいつだって一時的で、かつ効果が高いと感じるものほど費用もかかって長続きしなかった。
そんな日々が続くと、
………
………
「はぁー……一か月くらい休暇がほしい」
絶対実現されない願望をつぶやきながら、今日もオフィスで奮闘する。
「一ノ瀬さん、最近それ毎日言ってますね」
向かいの席の後輩、
お互いの眼の下にうっすらとクマのある私達はSEとして勤務してそこそこ中堅。
自分の仕事以外に新人の指導も必要となってくるポジショニングは絶対管理職より忙しいと思っている。
「まぁわかりますよ。『ギリギリでブラックとも言い難いくらいの職場』って一番タチ悪いですよね」
「……今週末は絶対早く帰る。絶対残業しない」
「それ、先週同じこと言ってます」
……生活に花がなさ過ぎて、過去のことか未来のことか現在のことかわからなくなっている。
まさに、グレー一色の生活。
「一ノ瀬さん、そろそろ新しい趣味でも始めたほうがいいかもですね。私生活に何かがないと、マジで搾取されるだけの日常になっちゃいますよ」
「わかってるよ……てか、春香ちゃん最近わりと肌艶よくない? エステでも行き始めたの? クマは消えてないけど」
「後半のツッコミいらないでーす。……ちょっといいお風呂屋さんを見つけまして」
けっこう
………
………
「温泉?」
「いや……どうだったかな、うん、多分温泉です」
「多分って何。スーパー銭湯的な?」
「あ、その表現が一番近いですね。お風呂とサウナとちょっとしたプールと休憩施設があって」
春香ちゃんはどことなく顔を赤らめ、私の席へと移動してきた。そっと耳打ちする。
「……ここだけの話、いわゆる、ハッテン場ってやつに近いんですよ」
「は……?」
一瞬、思考がフリーズした。
ハッテン場って、男同士の、出会いの場的なアレ?
「何言ってんだこいつ」
という表情を読み取ったようで、春香ちゃんはクスクス笑う。
「ニュアンスが違いましたね。ハプバーのが近いや。一ノ瀬さん一時通ってたって言ってたでしょ?」
彼女とは飲み会の席でだいぶヘビーな
今更平静を装うのが馬鹿馬鹿しくなる一方で、ハッテン場だのハプニングバーだの、就業中に話すような話題ではないとも思う。
……びくんと跳ねた好奇心は理性と相反して疼いてしまったのだけれど。
「通ってたって……何回か行っただけだし。人聞きの悪い」
「はいはい。で、興味あります?」
そういえば、最後にセックスをしたの、いつだろう……?
「……その施設って会員制?」
「はい。私も知り合いの紹介で行き始めたんですけど……あとでlineしますね」
――あぁ、完全に集中力がきれた……
無駄口を先に叩いたのは私の方だけれど、ひっそりと膝をすり合わす私は、彼女を恨まずにはいられない。
私も春香ちゃんも、地味なスーツの下には、はしたないという表現では位置づけられないくらいの情欲を持っている。
しかも発散できない制欲を無意識に抑圧していたのか、男子中学生波に身体が反応しているようだった。
ストッキングが膝で擦り合わされ、その奥の中心部が、ひっそりと
掻き立てられた微熱は、ちろちろと私の集中力を削るようだった。