マニアック

鬱憤晴らしに始めた動画配信がどんどん過激になって…

「ねえ、なんでこんなことも出来ないの?この会社で何年働いてるの?」

「すみません……」

声を荒げる上司の声を聞きながら、坂本まさみは頭を下げた。

(ああ、まただ……)

たまたま上司の機嫌の悪い時に声をかけてしまったのが悪かったのかもしれない。

くどくどと続く説教に反省しているふりをしながら、まさみは心の中でため息をついた。

部署異動をしてこの上司の元で働くようになってから、いつもこうだ。

上司の機嫌が悪いと何をしてもパワハラのような言葉を浴びせらえて、ストレスで胃がいたくなってくる。

とはいえ先の事を考えると辞めることも出来ず、まさみはこの苦しい環境に耐えるしかなかった。

「もう本当にやってられないよ……なんかストレス発散できることないかなあ……」

家に帰り、一人ビールを飲みながらまさみはつぶやいた。

ストレスをなんとかする方法はないだろうか、仕事以外に楽しいことを見つけて、仕事のことなんか気にならなくなってしまうような何か……。

とはいえストレス発散でよく聞く手段のスポーツは大変だし、疲れた身体を余計に疲れさせるようなことはしたくない。

(簡単に出来て、楽しいこととか……って、そんなものあるわけないかあ……)

そう思いつつもネットで検索してみる。

[趣味 社会人 簡単] [ストレス発散 楽しい]

そんな風にしてなんとなくページを飛んでいたところ、あるページがまさみの目に留まった。

「動画配信……?」

スマートフォンとネット環境があれば、簡単に動画配信ができるという紹介のページだった。

できたばかりのネットサービスに誘導するためのページだったが……なんとなくまさみは、面白そうだと思った。

youtubeに動画をアップロードしてまでやろうとは思わないが、そのページはリアルタイムで配信するサービスで、その時間に見に来てくれる人がいればコメントで会話も出来るし、いなければ一人でぼーっとしているだけになる、そんなものだった。

「いいじゃんこれ……」

誰も見に来てくれなくても、一人頭の中で愚痴を言っているより声に出して言っている方が絶対いい!

そう思ったまさみは、さっそくアカウントの登録をした。

メールアドレスと名前だけで登録できて、ボタン一つで始められる。

そんな簡単なシステムも今のまさみの背中をおした。

アルコールで普段はやらないことだって、簡単に出来てしまう状態だったのだ。

「名前はmasami、っと」

出来たばかりのサービスのようで、おそらく見ている人もあまり多くはないのだろう。

登録が完了するとすぐに、まさみは「開始!」と書いてあるボタンを押した。

するとすぐに画面がインカメラ表示になり、まさみが映し出される。

テーブルに置いて自分が映るようにして、その画面を眺めた。

右下に見ている人の数が映り、コメントも画面の右側に映るようになっている。

もちろん、現在の観客は0人だが、まさみは気にせず愚痴を言い始めた。

「本当、まじで上司が最悪で……」

「胃が痛くなりそう」

「仕事辞めたーい」

ビールを飲みながらの愚痴は止まらない。

見ている人がいるとかいないとか、そんなことはどうでもよかった。

「って、あれ……?」

しかし気が付くと、観客が5人になっている。

「もしかして、見てる人いる?」

まさみがそういうと、コメント欄が動いた。

『いるよ~』

『愚痴面白い(笑)』

『初めての人だよね、これからも楽しみ!』

「えっ、えー……びっくり、見てくれてありがとうございます」

まさか見てくれる人がいるとは思わず、まさみは驚いた。

たった5人とは言え、自分の話をきいてコメントをくれる――その体験は新鮮で、そして嬉しかった。

その日はしばらく愚痴を言ってから終了した。

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