あれから桃と楠木さんと、楠木さんの車で帰宅していた。
大通りに出ると桃は
「あたし地下鉄で帰りたいから下ろしてください」
と言って、二人きりになる。
桃…気遣ってくれたんだな。
あたしのマンションの近くになるころ、なんだかドキドキしていた。
「楠木さん」
「ん?」
思いを込めて、あたしは触れたくなった。
「うち、狭いですけど良かったらお茶しませんか?」
変な風に聞こえたかな…
あたし、気持ちを言いたい。
言いたくてしかたない。
「ありがとう。じゃぁそうしようかな」
「…はい」
「…もし、帰りたくなくなったらごめんな」
その瞬間。爆発する勢いで顔が熱くなったことが自分でもわかった。
気付いた楠木さんはははっと笑ってくれた。
うん、救われた。
今でもいいかな…
運転して空いてる手を握っても、触れてもおかしくないかな。
どうしよう…
こうしている間にも、楠木さんは先に気付いて、あたしの手を握ってくれる。
「これからは一緒にいてくれな」
「もちろん、です」
「まぁこの先は部屋に言ってからで」
「…は、はい」
緊張伝わったかな。
もう好きすぎで胸が熱くてたまらない。
「っは…ぁ、」
ここはまだあたしの自宅の玄関で。
自宅の鍵を閉めると同時にキスをされた。
あの時のような濃厚なキス。
端から漏れるあたしの声に、楠木さんもあたし自身も感度良く反応してしまう。
解放された唇から言葉が出る。
「楠木さん、好きです」
「はい。俺も」
「だから嬉し…きゃっ」
いきなりお姫様抱っこをされて驚くあたし。
「じゃぁ、ゆっくり愛し合いますか」
「は…はい」
こうして、やっとあたしは心にあった隙間全部にぬくもりと優しさをくれたのでした。
- FIN -