「ごほっごほっ! ごめ……冬華ねぇ、ホストなんて行くの?」
「ううん。行ったことない。でもほら……1人の家に帰りたくないし……誘ってくれる友達がいてね。興味はないんだけど寂しさを埋めるにはちょうどいいかなって」
「絶対行かないで」
健君はピシャリと言い放つ。
とりつく島もないほどに。
そして、真顔で正面に居直り、再度念を押される。
「冬華ねぇちゃんは絶対行かないで」
「わ、私そんなにハマりそうなタイプに見える……?」
「そういうわけじゃないよ。俺が行ってほしくないだけ」
ゆるく、穏やかな雰囲気が消え、少し睨むような視線に背筋が凍る。
不穏のような空気は健君のため息で打ち消された。
「せっかくまた会えたんだから、じっくり距離を詰めていきたかったんだけど……
俺、ずっと冬華ねぇちゃんが好きだったんだよ」
「へぇー……え?」
そうなんだ、と意味なく続けそうだった言葉が詰まる。
今度は私がむせた。
「ごほっ、ちょ、え、正気? 同情? やめてよ、そういう優しさって今逆効果っていうか……」
………
………
「た、健君とは、気まずくなりたくないなぁ……」
「どういう意味?」
「え?」
「だから、どういう意味? 気まずくなるなんて、それって俺は遠回しにフラれているの? 告白すらさせないで拒否?」
少し、いや、怒りを押し殺した声音に背筋が凍る。
ひどく重たい沈黙の後、ごめん、と健君は続けた。
「怒りたいわけじゃなかったんだけど……。冬華ねぇちゃんさ、俺にからかわれたとか思ったわけ?」
「ん……気を遣ってくれたのかな、とか……」
「あり得ないから、それ。クズ野郎のせいで傷ついてる女の子の弱みに漬け込むとかゲスすぎるでしょ。
俺だってそんな鬼畜に思われたとかかなりムカつく」
「そうだよね……ごめん」
「でも、冬華ねぇちゃんは男性不信になるだけの理由を抱えているのはよくわかった。……そこでなんだけど、俺を冬華ねぇちゃんのペットにしてよ」
「…………はい?」
「ペット……は違うか。都合のいい男になるよ。好きなように弄んで? 冬華ねぇちゃんが俺のこと好きになるまで付き合うから」
「だ、だめだよそんなの!」
「なんで?」
「だって、倫理的に……ていうか、話飛躍しすぎ!」
「飛躍してないよ。俺は冬華ねぇちゃんが好きだし、付き合いたいって思ってる。本当はもっとじわじわ距離を詰めて仲良くしたいって思ってた。
でも等の冬華ねぇちゃんが男性不信気味で自暴自棄。しかも隙だらけ。このままじゃ寂しさに漬け込むゲス野郎をまた引っかけそう。
だから俺としては多少性急でも男として意識して欲しい。ここまでオーケー?」
………
………
にっこりと笑った健君は、どこか悪巧みする猫のようで……
母性本能を