私の誕生日なのに、私より圭佑の方が楽しんでるんじゃない?
そんな事を心の中で独りごちながらも渡されるままに浴衣とタオルを胸に抱えて彼の後に続く。
脱衣所と入り口こそ男女で分かれてはいるが中に入れば壁は無く、広々とした天然かけ流しの大きな露天風呂が広がっている。
髪をまとめると手早く体を洗い湯に浸かった。
遠くの山々が広がる絶景を眺めていると、
「夜は行灯に明かりが入るんだってさ。ご飯食べたらまた入ろう」
と彼が楽しげに提案しながら肩に手を回してきた。
ゆっくり近づいてくる顔に苦笑しながら樹里亜はその唇を受け入れる。
しっとり濡れた首筋を撫でながら優しいキスを繰り返されると
“誰か来るかもしれないのに”
“温泉でエッチするなんて”
と否定的だった彼女も次第にうっとりと瞳を潤ませて自ら唇を薄く開き彼の舌を招き入れていた。
もとより何ひとつ身に付けていない生まれたままの姿、圭佑はなんの躊躇もなく私の鎖骨に唇を寄せた。
手が形を確かめるようにそっと胸元を撫でる。
その先端で刺激を求める突起を軽く摘まれるとお湯でほんのり染まった肌が更に火照った。
触れられる度にピクンと小さく震え敏感に反応するそこへ圭佑は唇を寄せ舌を伸ばす。
「…んっ、あ…はぁ…あ、あ…っ」
思わず声を漏らした時、樹里亜は背後から聞こえる物音にビクンと体を震わせて口を閉じた。
「や、待って誰か来てる…っ!」
圭佑を引き離すように手で押しやると、彼はわざとらしく唇を尖らせて心底つまらないという顔をした。
二人分の足音が男子更衣室と女子更衣室からそれぞれ聞こえてくる。
先に戸を開けたのは男性の方だった。
自分達と同じような年頃であろう男性は圭佑よりも少し筋肉質でいかにも爽やかなスポーツマンといった印象だった。
温泉に来ているのだから当然裸で、樹里亜はチラ、と横目に彼を見ただけですぐに水面へ視線を戻す。
「あ、どうも」
「どうもー、お邪魔してます」
「いやーこちらこそ」
圭佑はその男性と気さくに挨拶を交わしながら再び樹里亜の腰に手を回した。
「ちょっと、やめてよ人前で…」
人前だからいいんだろ、と耳元で小さく
「誰かいるの…?」
女子更衣室から、長い髪をラフに纏めた女性が恐る恐る入ってくる。先客だよ、と男性が彼女を迎えに行く様子を樹里亜は横目に見ていた。
「ひゃ…っ!…ちょっと、圭佑…」
お湯の中で彼の手が樹里亜の足の間に入り込んできた。
指先は茂みをかき分け割れ目を撫でるようにクニクニと動き出す。
「大丈夫、樹里亜が声出さなきゃバレないから」
「そんな…んっ、や…んん」