隙さえあれば触ってくる旺盛さに相反して、絶対に挿入をしない……
素股まではしちゃったんだけど、セックスに至らない決意の固さはちょっと引くレベルだ。
もちろん不能というわけではなく……。
私に触れながら抜くという、太々しさも持ち合わせている。
本当に、なんなのだろう、この男は……。
少なくとも、我々先輩の女どもが「健気で可愛い〜」と愛ていた雄司とは別の生き物すぎる。
今日で、この奇妙な生活も半月だ。
(その間に……何回、しちゃったんだっけ……)
片手に余るくらいの回数だけれど、イかされた数は3倍くらいだと思う。
………
………
………
「あ〜……イイ匂い……」
えっちモードに入る前の雄司は大型犬みたいで可愛い。
可愛いから、甘えたな彼拒否できない。
(きっと今日もめちゃくちゃにイかされちゃうんだ……)
雄司に触られたくてたまらない身体は、じわぁっと甘く痺れてしまう。
(キスしたいって……言ったら応えてくれるかな)
雄司にとって、挿入と同じくらいハードルを高くしているキス……。
不意打ちで仕掛けたら、きっと怒るんだろうなって……怒ったら、最後までしてくれないかなって、
そんなことを考えていたときだ。
ヴーッ!ヴーッ!
テーブルの上で、スマホがけたたましく振動した。
「タイミング悪ぅ……ほい、先輩」
「あ、うん……ありが、いや、これどうしよう」
ディスプレイには元カレの名前。
甘ったるい空気が一変し、雄司が、あの日居酒屋で見せた凶暴な目で射抜く。
「……ムシでいいでしょ」
「あー……うん……」
だよね、と。
私は苦笑いするしかない、
実は、この家に来てから何度もクソ男……元カレから電話が来ている。
いずれも応答せず、届くメッセージは
今どこ。
いつまでそうしてんの?
俺も悪かったって。
今何してるー?
……本当に頭が沸いているんだよなぁ。
俺もって、なんだよ。
俺「も」って……。
水を差すとは言い得て妙だと思う。
たった一言。
たった一文。
たった一回の着信。
頭のてっぺんからつま先まで、私とは精神が交わらない異形の生物が放ったそれで、幸福感に染まりつつある身体が萎えてしまったのだから。