ほんとに催眠術って存在するのかな?ほんとにそれをして、効果があるのだろうか?
菜摘は今年中学を卒業して、そこまで偏差値の高くない、中くらいの高校に仲の良い友達と一緒に入学したのだった。
しかしはじめは両親に反対された。
何故なら、中学の時の菜摘は学年で一番成績が良く、バスケ部のキャプテンも務めていたので、もっと偏差値の高い高校に行くべきだと思われていたからだ。
しかし、結局両親は許可した。
いくつかの条件付きで。
菜摘は女子バスケ部に入った。
仲の良い友達も、菜摘と一緒にバスケ部に入った。
しかし、この学校の女子バスケ部は人数がとても少なく、彼女達が入った時には、先輩は
彼女達を合わせても6人にしかならず、何とか公式試合には出れる人数であった。
一方の男子バスケ部は新入部員を除いても十五人いて、しかも地区内では強豪校であったので、体育館は
菜摘はいつも、ボールハンドリングをしながら、男子の迫力ある練習を見ていたが、夏休みが近づくにつれて、彼女の視線は一人の先輩にのみ注がれていた。
それは三年生で、名前を
一平は、カッコ良かった。
端正な顔に坊主頭、筋トレが趣味でそれによって鍛え上げられた逞しい肉体、ニキビ一つない白く綺麗な肌は、非常に美しかった。
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ある日、菜摘はインターネットで催眠術や暗示、おまじないや昔の魔法等を調べていた。
その中に一つ、興味深い記事があった。
“たった3秒で異性をムラムラさせる方法”
というタイトルだった。
そして、彼女はそれを、
しかしそれは中々本格的で、予想していたのより十倍は長い記事であった。
はじめに人間の心理や頭の構造など、昔から読書が好きで比較的難しいものも好んで読んでいた菜摘でさえ、何を書いているのか全く理解出来ない程だった。
が、何かを期待している、好奇心とは少し違った何か捉え難い、一種の性欲に駆られて、彼女は目を擦り頭を抑えながら必死になって読んでいた。
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もはや話題づくりなどどうでもよい。
これをいち早く身につけてやろうと思った。
菜摘は5、6回それを読んでから、それを試してみようと思った。
しかしそんな事を誰にすれば良いのか。
異性でなくてはいけない。
まさか自分の父親に?絶対無理!菜摘には兄弟が居なかった。
又、彼氏も居なかったので菜摘は諦めた。
というのは表面上だけのもので、矢張り心の底では催眠を信じたいという、それが本当である事を信じたいという欲望で一杯になってしまっていた。
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次の日の土曜日の朝、男女合同で練習があった。
昨夜はあの催眠術の事で頭が一杯で、寝るのが遅くなったのに、起きるとまだ辺りは白々としていた。
いつもより早めに家を出た。
体育館に着いて、既に男子が5人程、何か喋りながら床に寝そべっていたりストレッチをしたり、ドリブルをついたりしていた。
その中には一平も居た。