カーテンを閉め切られ薄暗い資料倉庫で、男と女の身体がぴたりとくっつき揺れている。
先ほどの声はその人影からで、扉を開けた今、先ほどよりさらにはっきりと聞こえてくる。
「い、いっ……そこっ、ぁ、あっあっ!はぁ……っああ、んっ」
二人の身体が揺れるたびに、女性の甘い声が資料倉庫に響いていた。
女性は本棚に手をつき身体を支え、その後ろから男性が腰を打ち付けている。
身体が揺れる度に、本棚が微かにきしんでいた。
パンッパンッと肉を打つ音と、ぬちゅぬちゅという濡れた水音も聞こえてくる。
絶頂が近いのか、男の腰の打ち付けがどんどん激しくなっていた。
「あっ!あ、あっ!ふぅうっ……あっ、ああっああんっ……!」
女性の声も、どんどんたかまっていく。
「いくっ、いっ、あっいくっ、いくいくいくっ……!」
「っ俺も……っ!」
パンパンと激しく肉体をぶつけながら、二人の身体が一瞬硬直する。
「アァッ」と一層高い声で女性が鳴いた次の瞬間、二人の身体がぶるぶると震え、男性が女性を強く抱きしめる。
何度か二人は身体をびくっびくっと揺らし、脱力した。
美奈子は音を立てないようにそっと扉から離れ、会議室を後にした。
心臓がどきどきして、苦しいほどだ。
(資料倉庫で、あんなこと――)
なんてものを見てしまったのだ、自分は。
今見たものが信じられない、しかし自分の目で、耳で目撃してしまった。
「嘘、でしょ……」
会社でそんなことが行われているなんて――
美奈子は動揺していた。どこかに報告した方がいいのだろうか――?
しかし、そんな思考とは裏腹に、美奈子の身体は熱くなっていた。
心臓の動機とともに、下腹部が脈をうっている。
頬が火照り、むずむずとした何とも言えない感触が下半身をじわじわと襲ってくる。
トイレで確かめると、そこはぬるりと湿っていた。
………
………
………
翌日――
美奈子は昼休みに、再びあの会議室に訪れていた。
いつも通り、やはり会議室に人気はない。
この後会議の予定も入っていなかったから、おそらく人が来ることはないだろう。
人が入ってこないように鍵を掛け、昨日と同じように椅子に腰かけた。
(別に、何もないならそれで――)
自分へ言い訳をするかのようにそんなことを考えながら耳を澄ます。
チッチッ、と時計の音がやけにうるさく聞こえるような気がしたが、それもすぐに気にならなくなった。
(あ、今日も、してる)
昨日と同様に、女性の微かな声が聞こえてきた。
資料倉庫の方から聞こえてくる――
その声に引き寄せられるようにして、美奈子はそろそろとそちらに近づき、また昨日と同じようにそっと扉を開けた。