恋のはじまり

施設当主との最後のセックス

「真壁さん。お身体はいかがですか?」

だからあたしは当麻さんを見習うことにした。

くっすることなく、おくすることなく自分を主張しようと。

だから今日、月一だった病院に、今月2回目にやってきたんだ。
………

………
「身体は‥‥もう疲れて気力なくなることが多くなりました」

「そうですか。薬の調合直ししますか?」

「はい」

「‥‥‥なんだか変わりましたね」

「え?あぁ‥‥‥はい」

 

なんだか照れるな。

それが異性のおかげと知れば、先生は驚くだろうなぁ。

人生になにも期待せずに、ただ客観的にしか物事を考えなかったあたしが、

自分の普段服用する薬の見直しって言うくらいだから。

変わった、って言われて当然か。

だって好きな人が出来たんだもん。

もう少しくらいは生きたいよ。

当麻さんとどうこうなる訳じゃないけど、そばにいたい。
………

………
「真壁さん?保護者の方が一緒に話を聞きたいって来てるわよ?」

「保護者?」

あたしは振り返ってその保護者を見た。

そこには当麻さんがいた。

「当麻さん!!」

「よ。今後の治療法を俺にも教えてください」

「あなたは‥‥‥」

「先生、この人はあたしの施設の新しい当主さんです」

あたしは微笑んで紹介した。

そうしたら、先生は「なるほど」と言ってあたしを見てくる。

そこから視線を当麻さんに戻して、声を出した。

「彼女は過去に全身の硬直炎症を起こしていたんです」

「硬直炎症?」

「えぇ。全身がリウマチみたいになってしまったんです」

先生はいつもの笑顔から真顔になった。

「‥‥‥そして今ではいつ発症してもおかしくないようにはなっています」

「それは‥‥本人いるのにいいお話でしょうか」

「大丈夫です。彼女は‥‥覚悟も決意も何もかも存じているから」
………

………
そうだよ。さすが先生。

むしろ締め出されてあたしの自由がなくなってしまうこともあるから、

あたしの病気の話をするときは必ずあたし同伴ではないと許さない。

先生が存じているように、あたしにはすべて話すようにと約束している。

 

「ねぇ先生。今度どっか旅行行きたい」

「んん?薬が安定してからですよ」

「えーけちー」

そんなやりとりを、当麻さんはただただ見ていた。

あたしは強いよ。

あたしはものすごく度胸あるし、なんだってやりこなせる。

そりゃぁテストとかそういうのは無理だけどね。

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