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期末試験が終わって、夏休みになった。
わたしと直樹が付き合っている事は、わたし達二人以外に知る人はいなかった。
付き合っていることを誰にも言わなかったし、そんな雰囲気を
別に知られてまずい事がある訳ではなかった。
しかし直樹はああいう性格で、あまり周りに騒がれたくないらしく、又わたしも誰かに彼氏のいることを自慢したい訳ではなかったので、結果こうなったのだ。
わたしと直樹は早朝の少しの時間以外は全く話さなかった。
登下校も以前と同じように別々であった。
デートも未だ一度もしていない。
そんな中で唯一カップルらしい事は、寝る前にLINEで電話をする事だった。
時間は、その日にもよるが、大体一時間は喋っている。
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ある晩、わたしと直樹はいつものように電話をしていた。
すると突然直樹がこんな事を言い出した。
「菜摘ってさ、一人でしたりするの?」
わたしはなんの事かわからなかった。
「その、オ…あの、オナニーっていうのかな、それさ、どうなの」
わたしは少し迷った。
別に直樹の口からオナニーなんて言葉が出た事に動揺したのではなかった。
自分が毎日、直樹の事を考えてオナニーしている、その事実を正直に話すべきか否かで迷ったのだ。
わたしは何とかこの問から逃げる為に、
「直樹はどうなのさ」
と少し怒ったような調子を作って言った。
そしてしどろもどろしているわたしとは反対に、直樹の答る時の口調は意外にもあっさりしていた。
「するよ」
わたしは少し興奮した。
スマホを耳に当てながら、直樹が自分で自分の性肉をしごいている姿を想像した。
「わ、わたしも、するかな」
「そうなんだ。手でやるの?」
「うん…」
直樹は妙にウキウキしているようだった。
さっきまでより明るい声になっていた。
わたしは恥ずかしくなって、電話口でうつ向き、頬を赤らめた。