他の人たちはまだ、炎で盛り上がっていたので気付かれない。
「はぁ、はぁ」
「んだよ高橋。体力ねーなぁ」
「な、ってか…なんで先生……」
「泣かせた。ごめんな」
「別に先生のせいじゃ…」
「俺を好いてくれてるんだろう?」
「!!」
「けど…お前の決心を聞いて思ったんだ。今はまだ一緒にいるべきではない、と」
涙を流すあたしのほほを指で拭う。
「確かにこのままじゃお互いに良くないしな。だからまた会おう。」
「…はい。会いましょう」
必死。
あたしは必死だった。
先生がどういうことを意味しているのかわかるようでわからない。
でもこのまま聞いてしまったら、決心が鈍りそうで。
だから、笑おう。
「えへへ。また、会いましょう。先生」
眉間にしわを寄せてこらえるあたしは、先生のネクタイを見ながら元気な声で言った。
駆け足になりそうなときにあたしはバックハグをされた。
「…高橋…」
「安東先生。離してください。名前も呼ばないで。あたしは戻れません」
「好きだよ、ちより。けどこの感情は抑えておく。けど、言葉にしたかった。このままで会えなかったときのために。いつかまた会えた時のために。」
あたしは耐えようとした。
でも“好きだよ”なんて言われて黙ってられない。
全力で振り返って、先生の両ほほを自分の手で覆ってキスをしてしまった。
「さようなら、大好きな先生」
踵を返して立ち去ろうとしたら先生は、あたしの腕をつかんで噛みつくようなキスをされた。
「ちより。最後にちよりを感じたい」
「へ?」