恋のはじまり

地下鉄アイドルの欲求不満

なんだこの展開は。

もしや彼は一夜を共にする覚悟があるのか!?

でもでもあたしはもうしばらくしてないし…………

ってそれは置いといて。

というか…………なんだか懐かしい感じがする。

誰かを思い出すなぁ。

誰だっけ。

うーーん…………

「はい到着。ゆっくり降りて」

「はい!」

「…………あのさ、ここ軍隊じゃないから普通にしてよ。というか…………」

下りてあたしは事実を把握してしまった。

「まだ俺だってこと、気づいてないの?」

彼は、あの彼ではないか!!

「まさか………トウモロコシくん!!??」

「その名前やめぃ!しかも深夜だから静かにしといてくれ!」
………

………
そう、そうだ!

あたしがまだ学生の時に出逢った彼だ!

それはまだ石山万里さんがアイドルになる前で、

偶然ばあちゃんの葬儀に行ったときに出逢った子だ…………。

あたし、石山万里さんのアルバムソロ曲のMVに万里落ちしたんだ。

懐かしいはずだ…………

ソロ曲は…………

あたしが作った曲だったから―
………

………
「今思い出しました石山万里さん」

実はあのまま気まずい中、あおいちゃんの部屋に来ていた。

あたしは正座して彼の前に座る。

彼はソファに座っている。

きつい視線。

でもかっこいい…………

「俺と一晩過ごしたいなら、俺はいいぞ」

「…………恐れ多いです」

「ただとは言わせない。もちろんセックスする」

「いやちょっとまって!!!」

「なんだ」

「なんで!?なんでそんな話とそんな流れに!!??」

「………言ってたろ。自分に自信がないって」

「う、はい」

「だからだ」

それだけ言うと彼はあたしの手首をつかみ上げて、

長くて長くて濃厚なキスをしてくれる。

いやん。

待って!!!!

「んむぅ!」

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