「ねー聞いてよお父さんー」
「なんだ?そんな愚痴たまってるのか?」
「そうだよー。うちのクラスの杉本がさー。ぜんっぜん勉強してないの」
「…………杉本?」
「うん。こんなんじゃ勉強不安じゃないのかよーって」
「あら、芽衣が心配しているのかしら?」
「止めてお母さん。心配なんてしてないから」
ビシッと返せば、母は黙る。
そこで気づくが、お父さんが悲しい表情をしていた。
「お父さん?」
「それさ、杉本健くんか?」
「!なんで!?知ってるの!?」
お父さんは確信した表情であたしの頭をポンポン、と叩く。
「めーい」
「なに?」
「優しくしてあげなさい」
「え?」
「彼は……いつも冷たくされているから。
だから、芽衣だけでも優しくしてあげなさい」
「意味わかんないし。やだ。あいつ嫌い。すぐに帰るからみんな冷たいんだよ」
「……個人情報だから話せないんだけどなぁ。ああいう子こそ悩んでるんだ」
目に涙があった。
お父さんは何を知っているの??
杉本って……いっつも明るくて仲が良い友達とは適度に遊んでる。
笑ってるよ?
冷たいんはまた違う話でさ。
「とある家庭があります」
「へ?」
「早くにお父さんを亡くしました。けど笑っています。
笑って一家を支えようと心に決めています」
「う、ん……」
「高校は行かずに中卒で就職を目指していました。
けど、亡き父から高校だけは行ってほしいと遺言を受けました」
「…………」
「なので頑張って勉強して勉強して、
特待生として入学ができるように死ぬほど勉強しました」
杉本の話してるんだろうな、というのはわかる。
つかあいつ片親なんだ…………。
大変だろうなぁ。