卒業まであと一か月も残っていない、教室に毎日来ていたクラスメイトの数もどんどん減って、使用者が少ないからか暖房も満足にきいていない図書室でるみ子が白い息を吐いている日だった。
るみ子よりも遅れてやってきた光也が、マフラーをしたままのるみ子の姿を見て、驚いた表情をした。
その日はいつもより更に寒くて、コートも脱ぐことが出来なかった。
隣の席にすとんと腰を下ろした光也が、
「寒いね」
と呟いた。
「暖房もっときかせてほしいよね」
るみ子が笑うと、光也も頷く。
いつも通り手が繋がって、それから光也が、「うちに来ない?」と言った。
「うちならあったかいし……親も、その、いないから」
図書室来るのは、いつの間にか勉強でも本でもなく、光也に会うことが目当てになっていた。
だからその申し出に、るみ子はおずおずと頷いた。
………
………
二人は手をつないだまま図書室を出て、電車に乗って、光也の家に向かった。
光也の家はるみ子の家と同じ方向で、二駅しか離れていなかった。
こんなに近くにすんでいるのに、図書室で出会わなければきっと全く接点なく卒業したのかと思うと、なんだか不思議な気分だった。
光也の言った通り、光也の家には誰もいなかった。
二階の角が光也の部屋で、机とベッドと、それから本棚にはびっしりと本が詰め込まれていた。
知らないアーティストのCDが本棚の上に散らばっていて、それで初めて、光也のことを全然知らないなあ、とそんなことに気が付いた。
図書室で時間を過ごしただけで、性格はなんとなくわかるけれど、趣味も、好きなものも友達も知らない人。
そんな人の家に来て、ベッドに並んで座っているのは不思議で、そしてわくわくした。
光也の手が、るみ子の手の上に重なる。
指が絡められて、光也の顔が近付いてくる。
いつも通り唇が重なって、温かい舌が侵入してくる。
「ん、んっ、ふう……」
いつもは出ない声が、るみ子の唇から溢れ出す。
図書室と違って、誰にも聞かれることがない。
舌の動きも、自然と激しくなった。
唾液が絡み合い、舌を擦り合わせて相手の柔らかな口内を味わい尽くす。
舌の先をじゅっと吸われ、唇をぬるりと舐められて、下腹がきゅう、と震えた。
もっと触りたいと、欲求が腹の底から湧き上がってくる。
息をする暇もない程激しく絡み合った二人の唇が離れると同時に、二人の身体はベッドへと倒れこんだ。
光也の身体がるみ子に覆いかぶさり、再び唇が落ちてくる。
深く口づけながら、光也の手がるみ子のシャツのボタンを外していく。
るみ子も興奮で震える手で、光也のボタンを外していった。
二人の手が互いの上半身を這いまわり、息を荒げながら身体が揺れる。
シャツのボタンが全て外されると、中に来ていた肌着を胸の上までたくし上げられた。
ブラジャーが露わになり、光也の視線がるみ子の胸に釘付けになる。
「そ、そんなに見ないで……」
白い胸を隠すブラジャーを、光也の手が上にずらす。