旅行というのは人を開放的な気分にさせる。
それが温暖な気候と美味しい食事、そして自由な空気に満ちたイタリアなら尚更の事だ。
世界中の観光客でごった返すローマを1人で歩きながらミカは青く澄んだ空を見上げた。
5年付き合った男に浮気され、大喧嘩の末別れて早二ヶ月、有給も使っての長いお盆休みを取って傷心女の一人旅…
に出たつもりだったがイタリアの陽気さに当てられすっかり嫌な事など忘れてミカは観光を楽しんでいた。
スペイン広場からローマの町並みをゆっくりと見渡す。
隣では外国人のカップルが楽しそうに話しながら彼女と同様に街を眺めていた。
私だって出来るものなら恋人とこの景色を見たい…
そう思って少し虚しくなり、小さくため息を吐いてそこを離れた。
彼女の立っていた場所に、スペースが空くのを待っていたのであろう若いカップルが駆け寄る。
それを横目に登ってきた時と同じように人混みの中階段を降りる。
「
浮かない表情のまま歩き出した彼女に若い男性が声をかけてきた。
欧州の中でも小柄だと言われるイタリア人にしては身長の高く、整った顔立ちをしている。
明るい茶色の髪が夏の日差しを受けてキラキラ輝いていた。
「ちゃ、ちゃお…」
「ニーハオ?アニョハセヨ?コニチワ?」