気恥ずかしさに何も言えなくなった私に彼は明るく「ジェラテリアに行くんだよ」と教えてくれた。
「僕のかわりに君の熱いキスを受けたらどんなジェラートもすぐに溶けちゃうね」
口説いてるのかふざけてるのかわからないと思いつつも久々の楽しい時間だった。
もっと彼と過ごしたい、その思いで共にジェラートを食べ、夕食を共にし、気がつけば薄暗いバールでお酒を飲んでいた。
随分酔いが回った頃、ミカはロレンツォに
“そろそろホテルに戻る”
と告げた
「凄く楽しかった、ありがとう」
こちらこそ、僕に最高の時間をありがとう、とにっこり笑ってロレンツォは恭しく彼女の手を取る。
「他の男が君を見たらすぐに連れて帰っちゃうよ、危ないからホテルまで送らせて」
そうして私を送り、何故かホテルの中まで彼はやって来た。
とりあえず酔いを覚まそうとベッドに腰掛けて水を飲む。
「もう君のいない人生なんて考えられないよ」
今日会ったばかりの相手に言うセリフではないだろう、と酔った頭で思いながらも彼の力強い瞳と優しく髪を撫でる手にうっとりと瞳を閉じる自分がいた。
ロレンツォは優しく私の肩を抱き、頬にキスをする。
「ミカ、キスしてくれたら教えるよ、僕らの愛の行く先を」
昼間の “キスしてくれたら教えるよ” に応じなかったのをロレンツォは忘れていなかったようだ。
あの時は戸惑ったが、今なら自然と唇を彼の頬に寄せることが出来た。
ちゅ、と軽いリップ音をたてて唇を離すと “そこじゃないよ” と言うや否や私の唇に彼のそれが重ねられる。
思いがけない強引さに驚きながらも押し倒されるままにベッドへ体を預けた。