「で、俺は結局何したらいいワケ?」
「一晩一緒にいて」
「……朝まで?」
「もちろん。あ、来客布団ないから
私だけベッドを使うのは気が引けるので提案したところ……
伊織はさらに深いため息と共に「危機感……」と頭を抱えた。
「いーじゃーん! 社会人になってから学生みたいに遊びにくくなってるし、一晩くらい一緒にいてくれたっていーでしょー?」
「駄々こねるって子供か! つーか、まさか酔ってるのか?」
「酔ってないよ、まだビール2缶しか飲んでないもん」
「飲酒済みかよ! 完全にほろ酔いじゃねぇか!」
なんだかんだ私に甘い伊織がこの流れで帰ることはないと内心踏んでいたけど、
私は伊織の腰に巻きつき「一晩一緒にいる」とはっきり承諾を得るまで離すつもりはなかった。
それから「しょうがねぇな」と折れた伊織と酒盛りを始めて……
どのくらい経ったのだろう。
「んんー……」
私は凄くいい気分で、ふかふかの……あぁ、これは自分のベットかな? で、寝落ちしてしまったらしい。
ぼうっとする意識の中、眠たくて仕方がなくて
せっかく伊織がいるのに、寝ちゃったら悪いなぁなんて思いつつも眠気で身体が、
ふと、なんだか布団とは違う暖かさに包まれた気がした。
………
………
(ん……伊織? 一緒に寝てるの……?)
ギシっと
私を抱き込むようにしている温もりは、間違いなく伊織の匂いだ。
(あー……なんか落ち着く……てか、いいのかなぁ……こんなに密着しちゃって……)
――まぁ、なんか気持ちいいからいっか。
どうせ寝てるだけだし、と。
私はつい伊織の方へ擦り寄った。
人肌に眠気を誘われていた私は、むくりと起き上がったらしい彼の動作に頭がついていかない。
はぁ、と。
切なそうなため息が耳元で
「ん、んぅ……?」
はむはむと含まれるとくすぐったくて、でもぞくぞくするような気持ちよさに身体をつい
「くふ、んん……」
吐息と共に甘やかされると
いいこいいこ、と恋人にするみたいに頭を優しく撫でられると胸がくすぐったくなる。
(えへへ……気持ちいー……)
うっとりと、まるで猫のように可愛がられていた私は、まさか伊織の手が服の中に潜り込んでくるなんて想像もしていなかった。