恋のはじまり

好きだから、一緒に・・・

「っはーーー!!」

会社の上司に嫌味をさんざん言われたあたしは、

行きつけのバーでお酒をガバガバと飲んでいた。

「マスター!もう一杯!」

「おーおー今日はずいぶんと飲むな」

「飲まなきゃやってらんない!!」

「まぁそうなるな。ほら、少し甘いものも飲めよ」

そう言ってマスターはアルコール濃度の低いピーチティを出してくれた。

「……マスターの優しさを半分会社にぶつけてやりたい…………」

「はは。」

「マスターも少しは飲んでよ!」

「俺は仕事だからな」

「飲んで!」

「…………わかった。ならここ終わったら一緒に飲みに行くか?」

ちょっとだけ、真剣さがつたわった。

あたしは何言ってんだ…………

マスターにさんざん愚痴って、付き合わすなんてひどい客だ。
………

………
「あたし帰るわ…………」

「はいはい」

「お金-………」

「次のバーでおごってくれ」

あたしが出した財布をあたしのバッグに入れるマスター。

え?ほんとに行けるの?

あたしは嬉しさと自分の無力さと、押し寄せる波をコントロールできずにいた。

マスターはエプロンを脱ぎ、車の鍵を店にいる社員に託す。

つまり店を閉めるのは社員でやってってこと。

そんなぁ…………いいのかな。

「え!?いいの?マスターそんな気を遣わないで………」

亮太りょうた、でいい。もうプライベートだからな」

「亮太、さん」

「はい?なんですか、千鶴ちづるちゃん」

なんだかくすぐったい。

ついつい笑ってしまった。

「マス…………じゃなくて亮太さんは何年あの仕事してるの?」

「親父がいなくなってからだから……もう10年にはなるな」

「結婚は?」

「してたら千鶴ちゃんを誘うなんてしないよ」

「ふぅん」

「気になるの?」

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