「みなちゃんはかわいいね。うちの隆一のお嫁さんになればいいのになぁ」
それがおばさんの口癖だった。
………
………
隆一というのは小さい頃からの付き合いで、長年一緒にいる。
親のいないあたしにも本当の親のように接してくれた。
ご飯を食べる時も、寝る時も、あまりあたしが一人で過ごす時間がないようにと、
何かにつけては隆一をうちに送りつけていた。
隆一は昔から何を言っても興味がないような気のない返事ばかり。
だけどいっちょ前に責任を持った言動をする。
顔もいいから女子の中から人気もあった。
‥‥‥ま、あたしも隆一が好きだったから嫉妬ばっかだったっけ。
こうしてあたしたちは親の環境に恵まれて育っていったんだ。
そして明日、ついに隆一のお母さん‥‥じゃなくって、
お義母さんの望むようにあたしと隆一は結婚をするんです。
「みなちゃん。ありがとうね。これからは本当の家族よ」
「おばさん‥‥ううん、ありがとうお義母さん」
あたしたちは慰め合っていると、あたしのスマホに着信が届いた。
ちょっと、と言いながらスマホを見れば、噂をすればなんとやら、
隆一からだった。
div class=”gyoukan”>
「?」
電話に出れば、すぐに来てほしいという話。
実は今、すでに隆一の自宅でお義母さんと一緒にいた。
その二階に隆一は自分の部屋にいる。
なんかあるなら降りてくればいいのに。
………
………
「お義母さん、ちょっと隆一の部屋に行きますー」
「あらあら。じゃぁ今日はもう19時だし泊っていきなさい」
「ありがとう!」
「じゃぁわたしはもう寝るわね。年だから眠たくてねー」
「ふふっ。おやすみなさい!」
あたしはその足ですぐさま隆一のいる部屋に向かって行った。
ドアの前に立つと、中から扉をあけられて驚く。
「わ!驚いたじゃん」
「わりぃ」
そう言えば急に抱き着いてきた。
ぎゅうって‥‥‥あたしが好きなハグだ。
「‥‥‥どしたの?隆一?」
「マリッジブルー」
「な、それは女性の方だから」
「みなもマリッジブルー?」
「あたしは‥‥別に?だって相手は隆一だもん。ブルーに思うことはない。」
「‥‥‥」
「それよりもなんで隆一がブルーに感じるの?」
「はははっ。嘘嘘。冗談。ブルーどころがまっピンク」
「相変わらず発想が豊かだわ」
「みなに似てるから」
笑いあっていれば、ハグしながら部屋の中に入り、扉をしめた。