恋のはじまり

おふろでばったり

――ぴちゃ……くちゅ……

「ふぁ……んっ……幸彦さっ……ん! もう……っ!」

 浴場に響く、耳を塞ぎたくなるような水音。

 深くなるキスに根を上げても、幸彦さんは放してくれない。

「かわいいよ、由梨菜……。もっと、舌出して」

「ん……ふ、あ……」

 深いキスに息を取られながら、幸彦さんの舌にとろとろになっていく。

 恥ずかしがっても、逃げ場のない狭いお風呂の中。
 
 大人二人では正面から抱きしめあうようにするしかない。

 どんなに目を反らし、身を捩っても、幸彦さんの熱くたぎるそれが私の羞恥心を煽る。

「さっきから気になってるよね? あんまりじっくり見られるのは恥ずかしいかな」

 意地悪く笑う表情は、大人の余裕そのもの。

「ゆ、幸彦さんだって、私の胸ばっかり見ているくせに!」

 とっさに隠そうとしたけれど、その手はあっさり取られてしまう。

「見るよ。きれいだし。かわいいし」

 当然のことのように口にした後、私の身体をぐるりと反転させ、後ろから抱きしめる。

「あっ……」

 浴槽が波打ち、私の背中にはお湯とは別の温度が寄り添う。

「じっくり見たいのも本音だけど、この体制のが触りやすいんだよね」

 足の間に入れられた身体。私の腰のあたりに、幸彦さんのそれが当たる。

 そして、無遠慮な手が私の胸を掴んだ。

「ふわっ! も、えっち!」

「男はみんなスケベですー」

「そういうことじゃなくて……っ! あんっ!」

 私の抗議なんてなんのその。

 幸彦さんはこりっと胸の頂を指で潰す。

「由梨菜、すげぇ育ったよな……ぺったんこだったのに」

 なにかを確かめるように揉みしだかれるたび、幸彦さんの掌の熱に心臓がきゅんとする。

すっかり自己主張をはじめた乳首をころころと転がされるとたまらず声が漏れた。

「あう……い、いつの話してるのよ……っ!」

「んー……最後に一緒に風呂入ったのって、十五年くらい前になるんだっけ?」

「覚えてな……あぁっ! いきなり、首舐めちゃやだぁっ! んんんっ!」

 項から、首、耳の裏までねっとりといやらしく舌が這う。

 ちゅっちゅっと水音を立てて吸われると、柔らかい刺激に肌が泡立つ。

「小さい頃の由梨はかわいかったぞー。『ゆきちゃん、ゆきちゃん』って俺の後をずーっとついてきて。俺のこと本当の兄貴だと思っていたみたいだし。叔父さんなんだよ、って教えたはずなのに、『おじいちゃん』と勘違いしていたのは笑ったわー」

「もう忘れてってば!」

 これだから親戚と言う奴は!

 恥ずかしいことばかり覚えられていて悔しい。

 当時の私は、二十年後、初恋の幸彦叔父さんから「成長したなぁ」なんて、お風呂で胸を揉みしだかれるなんて想像もしていないだろう――私自身、一時間前まで想像できなかったように。

「こっちもすっかり大人なんだな」

 するりとお腹を滑った手は、私の脚の中心へ進み……

「きゃあっ!」

 湯舟の中でもとろりと蕩けきったそこに触れる。

「そ、そんなとこまで……っ!」

 思わず足を閉じそうになる。幸彦さんはそれを阻み、秘部をなぞった。

「逃げるなよ。俺はもう容赦しないって決めたんだから」

 耳元で囁かれるそれは、親戚から「ちゃらんぽらん」「飄々としてる」と指をさされる幸彦さんじゃなくて……。

「大人になった由梨菜のこと、遠慮なく味わわせてもらうからな」

 肉食獣のような眼を隠そうともしない、大人の色気を前面にした一人の男の人だった。

   

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