恋のはじまり

おふろでばったり

「さすがにこんだけ濡れると寒いわー」

 さっさと全裸になってしまった幸彦さんは「ほら、そっちも」と促す。

「な、だ、だめだよ! なに! 真ん中って!」

 慌てて目を反らし、逃げようとした私を幸彦さんは逃がさない。

「あー。ほら、体こんなに冷えてる……」

 そのままお風呂場まで私の手を引き、服の上からシャワーをかけた。

「きゃあっ! もぉ! 何すんの! これじゃ帰れないじゃん!」

 頭からお湯を浴びせられ、全身が濡れてしまった。

 当然、下着も。

「な? もうここまで濡れたら風呂入るしかないだろ? 部屋ん中で全裸で過ごすの?」

 幸彦さんはにやにやと笑う。

「……っ! 意地悪っ! あっちむいてて!」

 意地も遠慮もバカバカしくなってしまい、私は観念して服を脱ぐ。

「ん……脱ぎにく……」

「濡れると脱ぎにくよなぁ」

「ここまで濡らしたのは幸彦さんのせい!」

 前開きのパーカーは何とかなったけれど、体に密着するTシャツは……『剥がす』に近い作業だった。

「由梨菜まだぁ? もう振り返っていい?」

「だめだってば! もう肌に張り付いちゃってる……」

「よし、じゃあ責任持つわ」

「え、ちょっ! あっちむいててってばぁ!」

 振り向いた幸彦さんは私のシャツをくるくるとまくり上げ、腕からスポーンと抜き取ってしまう。

 なに、その手際の良さ! とツッコむ間もなく、スキニーに手をかける。

「やだ、こんなの……っ!」

 お尻にぴったり張り付くスキニーパンツをずるりと脱がされると、どうしようもない羞恥心に見舞われる。

「昔を思い出すな。服の着せ替えなんてよく手伝っていたし」

 私の前で片膝をつく幸彦さんに見上げられる。

「お、覚えてない!」

 慌てて視線をそらした。

「由梨菜。そろそろ湯舟入れそうだから」

 そのままくいっとショーツに手をかけられてしまい、するりと降ろされる。

「も、やだぁ……っ!」

 小さい頃はどうだったか知らないけれど、大人になった私が、裸を見せるなんて初めてこのことで。

 しゃがみこもうとする私を幸彦さんは許さない。

「ほら、湯舟つかるぞ? てか、身体すっかり冷たくなってるな」

 自身の胸板に押し付けるように、私を正面から抱きとめる。

 そのまま、最後の砦となっていたブラのホックを外された。

「……あ」

 幸彦さんの分厚い胸板……そこから鼓動が聞こえる。

「なんか、すごい早い……」

 私に負けず劣らず、どくどくと。

「そりゃ、まぁね」

「緊張、してる?」

「……あんまり聞かないでよ。恥ずかしい」

 幸彦さんは腰に手を回し、叱るように私のお尻をきゅうっと抓った。

「きゃんっ! も、手つきがエロい!」

「んー? 下心がないとでも?」

 すりすりとお尻を撫でまわす手が、太ももの付け根に忍び寄る。私はその指を拒むように足に力を入れた。

「え、エロおやじ!」

「うわーおやじは傷つく……」

 いいながらも、幸彦さんの手は私の中心部へと伝った。

「真面目な話さぁ……ここ、触らせてくれたら、もう止まれないわ」

「……止まる気なんか、最初からないくせに」

「あ、ばれた?」

 私がちょっと拗ねたように唇を尖らせば、幸彦さんはにやりとして、ぎゅっと私を抱きしめる。

「大人になって、再開しなきゃ、ちゃんと逃がしてあげられたんだけど……ごめんな」

「謝らないでよ。私は、好きで悪い大人に掴まったんだから」

 気持ちはあっても、私たちは叔父と姪には変わらなくて。

 その罪悪感を打ち消すように、私達は視線をぶつけた刹那、唇を重ねた。

  

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