「こら
叱られているのは、
「だってこいつが―‥‥‥」
「お嬢に向かってこいつと言うな!!」
「だって俺の方が年上だし‥‥‥」
「お日様にあたって暮らしたいなら、わかる人間に育つことだ。わかったな?」
「‥‥‥」
「柳次、返事は?」
「わぁったよ!」
そう、あたしは立派に強いのです。
いわゆる権力を持っているからね!!
それからだった。
柳次があたしに構うようになったのは。
それが親からのしつけだから。
当然のようにしてくれている。
あたしとしては何にも変えようがない、宝物の柳次。
大好きだった。
けど、あたしは今日、おじじ様の言いつけ通りに、
未来を見据えている財閥の男性と結婚することになった。
「‥‥‥結婚?」
「あぁそうだ。つばきもいい年だ。もうそろそろ実を固めなければな」
いやだ、なんてハッキリ言えたよ。
「あたし、好きな人いるし」
「知ってる。柳次だろ」
なのになんで‥‥‥
………
………
「だがしかしだな。将来を見据えた相手ではないと良くないんだ。幸せになれない」
「それはあたしが決めることであって‥‥‥!!」
「幸せにしてやらねばだめだ。お前は大事な孫だからな」
そこまで言われたら‥‥‥ずるいよおじじさま。
あたしは両親のことをおじじさまから聴くことが一番嫌いだ。
いうなれば、死人に口なし。と思ってしまうから。
「あたしの幸せは‥‥‥あたしが決める事なのになぁ‥‥‥」
そんなこと、毎日思うんだよね。
‥‥‥
‥‥‥
「は、初めましてつばきさん!」
初対面の彼は、あたしの婚約者だ。
わりとあたしと身長が似ていて、優しい雰囲気がある。
それでもあたしはときめかない。
今日は二人きりで温泉旅行だ。
おじじさまからの命令として、あたしはこの日を受け入れた。
どうせ何もかも受け入れなければならない日が来るんだ。
今日も、明日も、明後日も、何も変わりはしない。
この人と結婚して、こども作って、育てて、寝る。
ただそれの繰り返し。