マニアック

アイドルの歌唱レッスン

毎日、毎週、毎月といっていいほど世の中にはアイドルがいる。

あたしはそのアイドルを育てる過程の手助けとして、ボーカルレッスンを教えている。

今日来るアイドルは、ものすごい顔立ちも育ちも良すぎる天才の子。

なんだけど、実は歌が一番苦手らしい。

感情を込めた歌を歌えない、3人アイドルのセンターがいる。

名前は相田大星(あいだたいせい)くん。

まだ駆け出しの子。

今日はまずはコミュニケーションをとろうと決めている。

だって、実は少しだけ、彼の話を聞いたことがあるから。
………

………
ものすごいお金持ちの坊ちゃんで、人生に必要なものはすべて手に入れているってことと、

プライドが高すぎで女遊びが激しいってこと。

それとプライドが高すぎだから、目立たないあたしの教室に来たんだろう。

断るつもりだったけどさ‥‥学生がいなくてしぶしぶ了承しちゃったのよ。

だからといって手を抜くことはしないし、先生と生徒の立場上、なにかせびられることもないよ!

そう言い聞かせている自分に涙が出ますよ。

誰もあたしのために泣いてくれないから、自分で泣いちゃえ。

でもいつか‥‥‥いつかはきっとあたしを大事にしてくれて、一緒に考えて、

一緒に泣いてくれる人を見つけるんだ。

それが将来のあたしの最大の夢!

 

にしても、約束の時間の10分前なんだけど。

あれ?あたし来る日にち間違ってた?

スケジュール表を見ているが、やはり今日だ。

(もしや‥‥‥なにか事故にでも!?)

あたしは慌てて上着を羽織って外に出た。

玄関から数メートルのところにちゅーしてる男女がいた。

しっ、しかもしっとりねっとりしたディープキス。

まだ午後16時ですが!!盛るの早いから!!!

思わずドキドキしてみてしまった。

心臓の音がうるさい。なんだこの感覚は!!
………

………
「なに見てんだよおばさん」

視線に気づいた男性はあたしに声をかけてきた。

しっかりみると、それはなんと生徒になる大星くんだった。

「こんな夕方から破廉恥はれんちなキスとかしてるんじゃねー!!」

あたしは目をぐるぐるさせながら叫ぶ。

「大星ー。そんなおばさん放っておいて、ホテル行こうよ」

「んあ?わりぃな。俺ちょっとだけ呼び出されてんだ。このおばさんに」

さっきから‥‥‥おばさんおばさん‥‥って‥‥‥

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