「大星に時間もらえるとか幸せなおばさんですね!老後もどうぞお幸せに」
このあま‥‥‥。
んん?まてよ。あたしは‥‥こいつの弱み知ってんじゃん‥‥‥。
あたしは満面の笑みを浮かべてこういった。
「大星くん。レッスンはもう始まるわよー」
予想外な行動だったのか、大星くんは慌てた様子。
「大星!こんなあばずれと何すんのよ!なに、レッスンって!!」
「あ、いや‥‥わりぃ。こいつ、俺のメンバーの姉貴なんだよな。だからあんま逆らえなくて」
「‥‥大星‥‥」
これで立場逆転だわ。さぁどうする?新人アイドルセンターの坊や!!
………
………
………
「さぁ、レッスン開始しますよ」
あたしは彼女のおしりを追いかけそうな勢いだったから、ひきずって教室に連れてった。
それはもう、ものすごい眼力をお持ちで。
いつか後ろからズサっとナイフで刺されそうな予感すらする圧がすごい。
くそぉ。
スタンガン常備しないと身の危険を感じるな。
「さて、きみはどこまで歌えるのか聞かせてほしい」
「口調おかしくね?」
「きみの頭よりはましだと思っている」
「はぁ??」
「早くここを歌ってみてくれ」
あたしはいたって真剣だ。
少なくとも彼より人生経験や場数は踏んできている。
だから、彼がどのくらいの力量と熱意でこの業界にいるのかを試したい。
しかし、彼がしぶしぶ歌いだしてわかった。
………
………
歌の入りもしっかりと定まっておらず、まったくの素人。
いや、そこらへんの素人よりも正直うまくはない。
「難しい顔してんな。どうだよ」
「‥‥‥」
なんて答えたらいいのか‥‥。傷つかない方法でいくのはかなり難しい。
だが、ここで腰を折ってしまったらみんなに示しがつかない。
それなら‥‥‥。
「ねぇきみさ、どれほど望んでいるの?」
「あ?」
「きみはさ、どんな気持ちでこの芸能界に入りたいの?なんでアイドル?なんかきっかけがあったの?」
「なんでてめーに話さなきゃねぇんだよ」
「一つもこたえられない訳?」
「‥‥‥
「答えられないなら、ばいばい」
あたしは言ってしまった。
いつもよりはソフトに伝えてみた。
あたしだって‥いつまでもこんな風に新人の枝を折りたくなかったから。
でも彼はだめだ。
坊ちゃんが気休めに芸能界に入るだけなら、彼はダメなんだ。