友達の居ない、根暗な私には、趣味と言える様な事は何一つとして無かった。
毎日学校が終わると、たった一人、ぼんやりと
因みに私がこの間に、エロい妄想をしなかった日は無い。
スーパーから出てきたムキムキの男の人や、大してイケメンでも無いのに髪型だけはいっちょ前の男子高校生らを目にすると、早速彼らがセックスする所を想像する。
彼らの相手は、素晴らしくスタイルの良い、しかし誰だか全くわからない架空の女性である。
彼らは私の脳内に作られた妖艶な部屋で、私に見られているとは露知らず、相手の女性と唇を重ね、舌を絡ませる。
そして彼らは私に、各々の性癖を
あるマッチョは、大きな鼻息をたてながら女性の谷間に顔を埋め、彼女に赤ちゃんプレイを懇願する。
ある若く真面目そうなサラリーマンは、女性の耳から首筋、鎖骨の溝、無毛の脇、小さなヘソ、綺麗な背中に長く白い脚に舌を這わせて舐め回す。
ある未熟な学生は、何が嬉しいのだか面白いのだか、ニコニコ笑いながら女性に話し掛け、無遠慮に、か弱い秘孔に爪の伸びた指を挿入する。
彼らは必死になって相手の甘い肉体に
そんな破廉恥で
しかし家に着き、マンションに住む色々な人達の自転車でギュウギュウになった駐輪場に、自分の自転車を停めていると、
不図、男性で言う所の”賢者モード”に襲われてしまう。
こんな妄想をしてる私が一番破廉恥で滑稽だわ!
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そして自分の部屋で布団に潜り込み、姉が帰ってくるまでは結局エロ動画を見て、帰ってきたらユーチューブを見て晩御飯までの時間を費やす。
こんな妄想や家での過ごし方は、十分に趣味と言えるのかもしれないが、私は自分の事ながらこれらを趣味とは認めない。
私は昔から、映画鑑賞や読書等も、趣味とは認めなかった。
私にとっての趣味というものは、一人で何かするのでは無く、必ず2人以上が”何かしら関わり合う”事でなくてはいけない。
ある夏の午後、私は学校から帰ってくると、まだ姉は帰ってきていなかった。
両親は共働きで、姉は大学生である。
この日はいつもより暑かった。
私は部屋にリュックサックを投げ捨てるように置いてきて、台所に行くと、冷蔵庫を開けて中を見た。
冷たい風が、私の汗で濡れた熱い顔にひんやりと感じられた。
しかしそんな冷感は夏の暑さに直ぐに溶けてしまった。
私は中から麦茶を取り出して、コップに注いで、それをグイッと飲み干した。
それからもう一杯注ぐと、麦茶を冷蔵庫に戻し、注がれたコップを持って自分の部屋に戻った。
「自分の部屋だったら良いか」
私はあまりの暑さに、着ていた物を全て脱いで、裸になった。
そして私は開いて網戸のはった窓に近寄り、外を眺めた。
恐らく外からは、私の汗でテカっている顔と小さな乳房が見られるだろう。
冷静に考えたら、恥ずかしくてできないけれども、このやりきれない暑さに私の頭はおかしくなっていた。
無風である。