「あのう・・・、先程、お電話した山崎です」
出迎えてくれた彼が私を見て驚いたような表情をし、思わず目を見開いた感じでこちらを
見ている。
その時の私は、ジーンズにジャケットというラフないでたちだったが、
「着こなしがモデルのようで、大型スーパーのチラシを飾っていそうですね」
と私を見るなり、彼はいきなりそう言ってきた。
確かに、私は周りの知り合いから、童顔のわりには妙に色っぽく、若い頃の高岡○紀に
似ているとはよく言われる。
孝道さんの熱い視線に、なぜか年甲斐もなくドキドキしてしまった私を、彼は教室の中に
どうぞと言って通してくれた。
教室に入った瞬間、初めて対面した孝道さんの知的な容姿に一瞬で心を奪われたのは、
彼がモロに私のタイプだったから。
その瞬間から、私は孝道さんのことを意識し始める。
今の私は孝道さんに、どのように映ってるんだろうか。
磨き上げてきた首元や手の甲の透き通るような肌の白さと栗色に光るショートヘア。
そして、ジャケットを脱ぐと、白いニットセーターを突き破らんばかりの自慢の胸。
それらを彼に見せつけるようにしながら、彼との会話が始まった。
あぁ・・・、ずっと今日2人で話していたい。
そう思ってしまうほどの衝撃的な出会いだった。
ダメダメ、いけないわ。
今日は5歳の娘を塾に入れたいということでここに来たんだから。
孝道さんは一生懸命に説明してくれた。
でも、塾の説明はほとんど耳に入ってこなかった。
孝道さんともっと会ってお話したい。
そのためには、どうしても娘を入塾させなければならない。
こうして話したり、電話したりすることがこれからできると思うと、毎日が楽しくなる。
熱を込めて説明してくれた彼の熱意もあって、あっさり入塾にこぎつけられた。
幼児教室は、週に2度の通塾で、授業は数字を書かせたり、ひらがなを覚えさせたりと、
半分以上が遊びだ。
ここの塾は必ず母親が送り迎えをするルールになっていた。
幼児教室に通わせるような母親というのは、大体が教育熱心である一方、ほとんど講師の
言いなりになる。
私も同様だった。
うん、うんと私は孝道さんの話を鼻から信頼して傾聴する。
そうしているうちに、ますます彼の魅力に惹きつけられていく自分がいた。