学生もの

部活の後で…

「はぁー!あっつい!」

私はごくごくと喉を鳴らし、水筒に入った麦茶を飲んだ。

ほのかな甘みが鼻腔を突き抜ける。

「ほんと、あっついな……」

隣で襟首のシャツをバタつかせているのは、同じバスケット部の小山おやまだ。

夏らしく日焼けした顔に、汗が一筋流れて、地面に落ちた。

「今日も練習キツかったねー!小山、大丈夫だった?」

小山と私の背はあまり変わらない。

そんなリーチの不利を抜いたとしても、小山は特別バスケットが上手い訳ではなかった。

そのため、何かと理不尽な立場に立たされる事が多いのだ。

「いつもの事だし、なんか慣れたわ。それに俺、下手かもしれないけど、バスケ好きだし」

そう言って、小山ははにかんだ。

その表情に胸の高鳴りを覚えてしまうのは、私が小山のことを好きだから、なんだろう。

「そっか、小山らしいね」

「好きじゃなきゃとっくに辞めてるよ」

好き、という単語に、またしても胸が痛んだ。

僅かな沈黙がもどかしく、私は小山に水筒を差し出す。

「これ……麦茶、飲む?小山、自分のやつ空でしょ?飲みきっちゃっていいから」

「え、いいの?サンキュー、前島まえしま

「私は家、近いからね」

触れ合わない指先。

麦茶のちゃぷん、という感覚が音のように伝わってきた。

小山はごくりごくりと麦茶を飲み干す。

私はその喉元をじっと見つめていた。

「あーっ、生き返る!ありがとな」

小山は私に水筒を手渡すと、少し間をおいて立ち上がった。

「よし、用具室閉めて帰るか」

そう言って歩き出す。

タンタン、と上履きの音が体育館に響き渡った。

その足音が小さくなっていく事に、私は少しだけ不安を感じた。

「あ、小山!」

私も慌てて立ち上がり、小山の後を追う。

足音が重なり、今、ここには私達しか存在していないような気持ちになる。

実質、体育館に残っているのは私と小山の2人だけで、間違ってはいないのだけど。

用具室は暗いせいか、体育館よりも涼しい気がした。

今、2人きり。

2人っきりなんだ。

そう思うと、心臓がひっくり返るような気分だった。

「よし、中のチェックはOKだな」

小山はポケットから鍵を取り出す。

部活前に、職員室で借りてきたものだ。

私に背中を向けて、体育館の方へ歩み出す小山。

その一瞬に、私はつい小山の腕を掴んだ。

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