初めて近くで顔を見たが、やはり可愛い顔をしていて余計に水樹のS気に火が付いた。
給料日前で金欠だから宅飲みでどう?とアパートにあげた。
実際バイト代が入るまであと一週間なのだからあながち嘘ではない。
「お邪魔します…」と不安げな声で入り
草食そうな外見の割りに、そういったことへの好奇心は人並みにあるようで見るからにそわそわして緊張と期待を隠せないようだった。
軽いつまみと飲み物を出して隣に座り、他愛もない会話に花を咲かせる。
その間も木村は落ち着かなさそうに目を泳がせていた。
(わかりやすくて…かわいい)
同じ年の娘達より遊び慣れている水樹は
雰囲気のつくりかたもセックスへの誘いかたも
20歳という年の割には身についていたし、
今まで、例え単なる体目的であっても誘惑して断られたことがないというのは大きな自信でもあった。
水樹は到底酔えもしないジュースのようなカクテルをテーブルに置き
何も言わずに木村を見つめると、想像通り木村は僅かに目を逸らす。
それを気にせず水樹は一度目を伏せて、それから彼の唇を見つめた。
キスして…と暗示をかけるように唇に視線を送る。
それから少しして、徐々に顔を近づけながらまた木村の瞳を見つめた。
「あ、あの!」
木村が思い切り顔を逸らしながら声を上げた。
緊張に耐えられなくなったのだろう。
「あの…ぼ、ぼくの顔、何かつ、ついてますか…?」
震えながら声を出す。
ある程度経験を積んだ男ならタイミングよく顔を近づけてくるはずなのに。
木村にそんなスマートさを求めた自分がバカだった。
この手法が上手くいくのは、遊び慣れた男たちの場合だった。
水樹は少し苛立ちながら、もう遠回しな誘い方は諦めて
ストレートに襲ってみようと考えなおした。