先輩たちがタイム更新を目指して泳ぐ中、私は新入部員たちを引率して、男子更衣室の前にやってきている。
女子マネージャーは全部で三人いるが、私が主に一年生を担当することになっていた。
「えっと、水着には色々な種類があるのは知ってるよね?」
「はい!」
私の問いかけに、椎名くんが一番最初に答える。
他の新入部員も負けじと後に続いた。
わぁ、一年生って可愛い……!
私は思わずきゅんとしてしまった。
言っておくが恋愛感情でのトキメキではなく、母性本能でのトキメキである。
「スパッツタイプ、ショートボックスタイプ、ロングボックスタイプ、レジャー用、それにブーメラン。主な種類はこんなところだけど、うちではお揃いのショートボックスタイプに、校章を入れたものをユニフォームにしています」
新入生たちは私の話に熱心に耳を傾けてくれる。
中でも椎名くんはコクコクと頷きながら聴いてくれるので、つい私は顔を
キリッとした先輩マネージャ―でいるつもりだったのに、その計画は早々に頓挫しそうである。
「今日は手持ちの水着を着てきてもらったけど、さっき注文していたユニフォームが届いたから履き替えてきてください。じゃあ、これ……」
私は抱えていた水着入りのダンボールを誰かに預けようと、新入部員たちの顔をきょろきょろと見渡した。
「俺が持っていきます、先輩!」
「あ、ありがとう。お願いします」
椎名くんはすぐに立ち上がって、私に向かって両手を差し出してきた。
私とは比べ物にならない大きな手は力強さを感じさせたが、ニッコニコの顔からは可愛さしか感じない。
「あ!竜也ズルいぞお前!俺が持ちますっ」
「俺も持ちます!寄こせ椎名!」
途端、後輩たちがワァワァと騒ぎ出した。
荷物持ちぐらいでこんなに大騒ぎするなんて、一年生って子どもみたい。
私は呆れ半分ほほえましさ半分で、思わずくすくすと笑った。
「五分で着替えてきてね!」
「うっす!!」
「うん、元気でよし!」
十人分の返事を聞き届け、私は更衣室を離れて歩き出した。
「あの先輩、マジかわいいな……」
「ああ、めっちゃ可愛い……付き合いてぇ……」
次の仕事に気を取られていたため、背後で男子たちが交わしていたひそひそ話は、私の耳には届かなかった。