学生もの

後輩ワンコくんの大きなアレで…

プールサイドで水温のチェックをしていると、更衣室からぞろぞろと新入部員たちが出てきた。

やはりユニフォームは嬉しいものなのか、みんな自分の履いている水着を触ったり、互いに眺め合ったりしている。

水の抵抗を少なくするため、ユニフォームは体の線にピッタリ沿う形をしているが、それは競泳水着なら当たり前のことだ。

つまり下半身も……正確に言えば股間の形もくっきりと浮かび上がってしまう。

入部した当初はものすごく気になって恥ずかしかったものだが、今となってはそういうものだと割り切れていた。

他のマネージャーは、あの先輩とあの先輩は大きいだの、同級生の中では誰が一番大きいだの、あっけらかんと品評したりもする。

男子など、くっきり見せつけるのが格好いいと思っている節さえあった。

私はまだそこまで開き直れないし、男子の感覚も理解できないが、せめて下手に恥じらったりはしないように気をつけている。

恥ずかしいと顔に出すほうが恥ずかしい気がするので。

「みんな、着替え終わった?似合って……」

「な、なんだよそれ!おま、ちょっ……ブッ!あははは……!」

私が声をかけようとした瞬間、新入部員たちの後方でドッと笑い声が上がった。

プールで泳いでいた先輩たちも、何だ何だと笑い声の方に視線をやる。

「こら、練習中にうるさいよ!」

他の女性マネージャーが彼らに注意するため歩いてきたが、列の後ろに近づいた途端ぴたりと足を止めて、ブゥッと吹き出した。

「ちょ、ちょっとぉ!それマジ?あははは、は、だめ、ウケる。あはは」

女性マネージャーはついに膝から崩れ落ち、腹を抱えてひぃひぃ言っている。

あの子、普段はそんなに笑う子じゃないんだけど……、と私はいぶかしく思いながらも、急いで彼らの方へ向かった。

「みんな、どうしたの?」

「あ、ひな子……椎名くんの、み、水着……ふふふ」

「椎名くんの?」

促されて、列の後方にいた椎名くんに視線をやると、彼は気まずげに頭をかいている。

そのまま視線を下げていき、椎名くんの水着を目にした瞬間――私は顔を真っ赤にしてしまった。

「し、しいな、くん……サイズ間違ってた、かなっ?」

隠しようもないほど上擦ってしまった声で、やっとのことそう尋ねる。

「いえ、サイズは大丈夫です。ウェストとかぴったりっす。ただその、俺……」

どうしよう、恥ずかしがるのだけはやめようと思ってたのに!

あわあわしている私の背後で、先輩たちがヒュウと口笛を吹く。

「ちんちん昔っからすげーでかいんス。だからこういう水着だと目立って……」

「そ、そうなんだ」

また声が引っくり返ったが、椎名くんは眉を八の字にしてニパッと笑ってくれた。

「椎名、お前体格いいもんな。いやでもスゲーわ!すごすぎて思わず笑っちまった」

「もっこりしすぎじゃね?でも羨ましいなー」

「お前こんなん彼女泣くだろ」

男子たちが口々に椎名くんをからかうが、椎名くんは慣れているのか涼しい顔で聞き流している。

何人かの男子は、赤面している私が気になるのかチラチラとこちらをうかがってきた。

このままでは椎名くんも私も恥ずかしい思いをし続けることになってしまう!

それは避けたい……と思い、私はつかつかと椎名くんの方へ歩いていく。

「せ、先輩?」

「元気でよし!」

私は振りかぶって、平手でペィンッと椎名くんのお腹を叩いた。

近くで見ると更に、お、おっきい……という呟きは胸の中にしまう。

「え……あ……」

椎名くんは動揺した様子で口をぱくぱくとさせたが、私はそれに気づかないふりをして、大きく手を打ち鳴らした。

「ほら!タイム測るよ!元気に準備体操始めてください!」

「うっす!!」

私の雑なまとめと雑な対応が功を奏したのか、まぁ殊更ことさら騒ぐことでもないかという空気が漂う。

言われた通り準備運動を始めた彼らを見守っていると、背後からそっと椎名くんが寄って来た。

「あの……ありがとうございます」

「ううん、むしろ恥ずかしがったりしてごめんね」

「いえ、それは……可愛かった、です。や、そうじゃなくって、俺……嬉しかったです。あんなふうに収めてもらって。じゃ、準備運動、してきます!」

背の高い椎名くんは、ぐっと腰を屈めて私を見つめながらそう言って、皆の輪の中に戻っていった。

そのお尻には大型犬のもふもふした尻尾が見えるようで、私は思わずふふっと笑ったのだった。

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