私こと
理由は、元婚約者の心変わりにプラスして相手を
しかもその心変わり相手というのが、私の妹…
笑いごとじゃないけど、笑うしかないし。
私の両親も元婚約者の両親も驚いてたけど、妹は昔から可愛くて要領が良かった。
我が妹ながら感心するほど、己の内面の醜さを隠して年長者や男に取り入るのがうまい。
だからか、両親共は妹に怒って見せて私に味方するかのように見せかけて、結局は何だかんだで妹と元婚約者の婚約を許した。
妹の腹黒さを見抜いて蛇蝎の如く嫌っている父方の叔母家族にすすめられて、私は実家を出ることにした。私は社会人で1人で暮らしていくに十分な収入があるけど、妹が何の役にも立たないことを内心では分かっている両親に涙ながらに頼まれて、実家で暮らしていた。
妹は大学入試に失敗してからは浪人しない、かと言って正社員の仕事を探すことをしないで実家に帰省していた。一応アルバイトはしてたけど、家に5千円だけ入れて残りは自分の小遣いにしていた。
そんな妹に、母と父がこっそり小遣いを渡してたことも知ってる。
そういう状況だったので、妹が私の元婚約者に手を出すのは簡単だっただろう。
私の仕事が繁忙期に入ってからすぐに、妹はあの男に粉をかけたようだ。
両親は妹に対して怒ってる体をとりつつ、内心ではウキウキと妹の結婚の準備をしている。
元婚約者の両親も怒っているふりをしながら、可愛くて若い妹を気に入ったようだ。
元々私は、この人達からよく思われていなかった。
私の学歴や職業が気に入らなかったらしい。
ただ何かと私に良くしてくれていた元婚約者の妹さんだけは、本気で怒ってくれている。
元婚約者に未練がない、妹に対して憎しみがないと言えば嘘になるが、皆がお花畑状態になってくれたおかげで私はさっさと荷物をまとめて叔母家族宅に逃げることができた。
叔母家族の家に居候しながら、私は今新居探しをしている。
「ユズちゃん、いい家は見つかりそう?」
ある晩、私が住宅情報の雑誌を見ていると、大学生の
「会社まで徒歩圏内にあるのを探したら、やっぱり高いんだよねえ。払えないわけじゃないけど、節約できるとこは節約したい。それに転勤があるかもしれないから、高い所は余計にためらうんだよね」
私は愚痴を交えて報告した。
莉緒ちゃんは私の妹を視界に入れたがらないほど嫌ってる。
妹がぶりっ子していると本人の前で「うざっ」と言うほどだ。
莉緒ちゃんが平凡な子であれば「ブスの
頭の方もいい。
「気にしないで、うちにずっといればいいのに。…あっ。でもこの辺りなら、私がバイトしてるところのパートさんがいい情報持ってるかも」と、莉緒ちゃんは雑誌に書いてある地域名を見ながら言った。
「その人の旦那さんが不動産業をしてるんだって。ユズちゃんが迷惑でなかったら、聞いてみようか?」
「ありがとう、リオちゃん。ぜひお願い」