「今日だっけ、アキ君が来るの?」
玄関で靴を履きながら、夫のヤっちゃんが私に尋ねる。
「うん。今日の昼」
私は
「ごめんね、さっちゃん。さっちゃん達ばかりコソコソさせて」
「コソコソさせられてるのは、そっちもでしょ?気をつけてね」
「ありがと」
ヤっちゃんは私に手を振ってから、旅行バッグを下げて玄関のドアを開ける。
「おみやげ、忘れないでよ?」
「はいはい」
笑いながらヤっちゃんは出て行った。
キッチンに戻ると、家政婦の
「ごめんなさい、千春さん。片づけ途中で投げてた」
「いいえ。もう、泰さんは行ったんですか?」
「うん」
「じゃあ、私もそろそろお休みをもらって娘の所に行きますね。やりすぎないようにね?」
「はい」
イタズラっぽく笑う千春さんに、私も笑う。
千春さんが娘さん訪問のためにマンションを出てから、数時間後、私の恋人アキちゃんが尋ねてきた。
アキちゃんは私と同じ年で、小さい頃からの恋人。
私が結婚してるから、一応不倫相手ということになる。
「
アキちゃんは、私に手土産を渡しながら尋ねる。
「うん!おみやげいっぱい頼んじゃった」
「沖縄だっけ?」
「そうなの。いつか、2人だけで行きたいね」
私はアキちゃんに抱きつく。
「そうだね」
と、アキちゃんは私の頭を撫でる。
………
………
………
私とヤっちゃんは夫婦だけど、夫婦じゃない。
偽装結婚。
ヤっちゃんにも恋人がいて、今日はその人と一緒に旅行。
実はヤっちゃんの恋人
私は何度も克哉さんに会ってるけど、とってもすてきな人だと思う。
優しいし、頭もいいし、顔もいい。
だけど、やっぱりヤっちゃんの親族特に一族の中で力のあるおじいさんがヤっちゃん達の交際を認めてくれなくて。
ヤっちゃんのお父さんとお母さん達家族はその辺りに偏見のない人なんで、ヤっちゃんが幸せならと認めてくれたらしいけど。