マニアック

ごほうびマッサージ

「あっ!は……ふぁ……きもち、いいです……!」

暖かい掌が肌を滑るたびに背中がぽかぽかする。

「声は我慢しないでくださいね。声を我慢してしまうと体が緊張してしまいますから」

原田先生は耳元でささやくと、うなじから首元にかけてぐっと親指を滑らせる。

「は、ひゃい!」

また、鼻にかかる声が漏れた。

「肩と腰を特に気にされていたようですが、首や肩甲骨もかなり固いですね。例えば、こことか」

指圧されたのは、意識していなかった耳の後ろ。

頭部を持ち上げるような筋肉を押し上げる力に「あぁー……」と力が抜けていく。

「では、ここからは二人で施術させて頂きます。……相良」

「はい。檜山様、今度は私が上半身を担当いたしますね」

「は、い……お願いします」

相良君の手は原田先生よりもさらに大きく、男の人の手って感じだった。

オイルで滑りの良い肌を力強く、これでもかと揉まれる。

それこそ私が求めていた「ごりごりされるマッサージ」だった。

「んんっ……そこ、すごくいいです……っ!」

凝り固まった肩甲骨けんこうこつの筋肉をぐいぐいと指圧される。

原田先生がとろけるマッサージなら、相良君は元気になるマッサージって感じ。

「施術箇所を少し移動しますね」

原田先生が足を、相良君が腕やわき腹にオイルを垂らす。

「ふあぁ……すごい、きもちい……」

二人の技術はもちろんだけれど、イケメン二人にしてもらっているこの状況がもう「ごちそうさまです!」って感じ……!

「よかったぁ。してほしいことがあったら、もっとばんばん言ってくださいね!」

相良君の弾んだ声と原田先生の溜息に思わず笑ってしまった。

「じゃあ、お尻と太腿に移動しますね」

原田先生の手がワンピースの裾から入ってくる。

「ひゃっ」

マッサージとはいえ、男の人に触られるのは恥ずかしい。

でも真剣に施術をしてくれているわけだから、恥ずかしがるのもおかしいよね、と頭を振る。

私のお尻をぐっぐっと持ち上げるようなそれは疲労困憊だった筋肉が解されていく感じがして、文句なしに気持ちいい。

気持ち、よいのだけれど……。

(あ……そこ……)

原田先生の手は、オイルの滑りを利用して太ももの付け根にぬるんと入ってしまった。

「あっ……」

普段人に触られない箇所。

手を少しずらしただけで、敏感な場所に触れてしまう……。

皮膚が泡立つようにぞわりとして、でもそれはすぐに嫌なものではなくなった。

恥ずかしくて、少しくすぐったくて、ついもじもじしてしまう。

「リラックス、してくださいね?」

体を固くしたことを相良君に見抜かれ、「はい」と小さく返す。

相良君は私の鎖骨を三本の指で撫でていく。

うつぶせの体制のままなので、自重によって刺激が強い。

「鎖骨周辺のリンパを流しています。もしかして、痛いですか?」

「んっ……少し……」

「肩が前のめりになることで、より肩こりを引き起こしやすくなります。ここが痛むということは、姿勢が丸くなっている時間がちょっと長いのかもしれません」

「あっ……ん……心当たりしか……はぁ、ないかも……」

相良君はどんどん鎖骨から手が下りてきて……乳頭まではいかないけれど、ほとんど胸をむにむにと撫でる。

「ふぁ……んん……」

会話しながら、あまりに堂々としているので、それが正しい施術なのかどうか判断がつかない。

ぬちぬちとえっちな音を立てて胸を撫でられる度に、すっかり自己主張してしまった胸の頂が「こっちは触ってくれないの?」と切なくなるのを感じる。

(このまま、とろとろのオイルでつままれたら……)

触ってもらえない乳首が、じんと疼いた。

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