マニアック

私のコイビト…

カワイイ私のお得意様に興味津々

短大卒業後、一旦は就職したものの職場の上司との人間関係が上手くいかなくて会社をやめて、地元の八王子に戻って、眼科で受付のアルバイトをしていました。

しかし、将来はここ地元八王子でネイルサロンのお店を出したいと夢見ていましたが、如何せん、現状では資金が全く足りなかった。

食費なども切り詰めて生活もギリギリで苦しい毎日。

だから、資金作りと生活のために少しでもお金を稼ぎたかったので、昼の眼科での受付に加えて、スナックでのアルバイトを掛け持ちで始めたのです。

そのスナックは「エンジェルアイ」という名前のお店。

ママは昔銀座の高級クラブで働いていた経験があり、40代後半になり、ここ高円寺で店を構えることになったとおっしゃっていました。

偶然にも短大時代の友達の知り合いが営むお店だったので、友達に頼み込んで亜由香という源氏名で働かせてもらうことになりました。

それほど派手でもオシャレでもなく、あまり華やかな雰囲気の店ではなかったのですが、夜の店で働くのが初めての私でも働きやすい、すごくアットホームな感じがありました。

私はルックスには少し自信があって、10代の頃からそれなりに男子にはモテていたこともあり、入店早々から結構何人かお得意さんの男性客ができました。

働き始めてから3ヶ月ほどたったぐらいでしょうか、ある日新規のお客さんが指名してくれたのです。

その男性は脇山さんという方で、証券会社で勤務していた40代半ばぐらいの独身。

でも、年齢の割に見た目はカワイイ系俳優の千葉雄○似の男性でした。

自ら起業して様々なマッチングアプリを開発して大成功し、今では考えられないまるで以前のバブル時代のような高い収入を当たり前のように稼いでいるようなのです。

確か新宿の高級マンションで暮らしているんだとか言ってたな。

そんな景気のよさから、当然のように週に何度も頻繁に接待のために会社の経費でキャバクラなどに行きまくっているらしい。

銀座や渋谷といった場所に毎日のように繰り出しては、何軒かハシゴして飲み歩いているとか。

そして、必ず最後の締めとして都心から少し離れた高円寺の小さなスナックにわざわざ足を伸ばして、軽くビールを飲んで帰宅する。

それが彼のいつものルーティーンとなっているようです。

そんな彼がある日から私のことを毎日のように指名してくれるようになり、何度か私にアプローチしてきました。

初めて見た時からすごくカッコいい方なのはわかってはいました。

けれど、私がスナックで働いているのは生活費を稼ぎたいだけなので、お客さんと恋愛関係となりお付き合いする気は全くありませんでした。

実際、これまでも何人か私の連絡先を聞いてきましたが、全ていつもやんわりとお断りしていました。

今までなら結構あっさりと諦めて引き下がるお客さんが多かったのですが、脇山さんに関しは、なかなか諦めてもらえず、毎回帰る間際にアプローチしてくるのです。

私も負けじと毎回笑顔でかわしては、自分のプライベートなことはほとんど彼には話しませんでした。

さすがにそのうち諦めてくれるだろうと思っていましたが、実は、これが逆効果になってしまいました。

話を聞いていると脇山さんはとにかくモテるタイプの男性で、今まで狙った女性は全てモノにしてきたそうです。

まあそりゃ千葉雄○似のカワイイ系のイケメン男子で、かつ経済的にも裕福な彼なら、大抵の女性は口説かれたら落ちるはずです。

ただ私は違います。

私はお金が欲しくてスナックで働いているわけで、彼氏を作るためにこの店に働きに来ているわけではありません。

だから、彼を見ても悪い言い方をすれば私のためにお金を支払ってくれる、ただのお客さんとしか見ていなかったのです。

言ってみれば、援助してくれる“足長おじさん”的な感じでしょうか。

しかし、脇山さんはこう言うのです。

「僕は今まで亜由香ちゃんのように頑なでガードが固い女性に出会ったことがないから、口説き甲斐があるよ!」

最初は冗談で言っているのかと思いましたが、徐々にその言葉が本気だということがわかってきました。

本気だと知ってからは、私の気持ちにも少しずつ変化が起こります。

こんな私のような女に一生懸命なって口説こうとしている彼が、なんだかいじらしく思えるようになり、カワイイなと少しずつ彼に興味を持つようになりました。

でも、正直に言ってしまえば、脇山さんは私のタイプにドンピシャの男性でした。

私って10代の頃から、見て目が中性的なカワイらしい男性が大の好みだったので、千葉雄○似の脇山さんが店に現れた時は、密かにこっちが一目惚れしちゃったぐらい。

少女漫画に出てくる王子様のような男性にも憧れがあったし、いつか自分の目の前にもそんな男性が現れないかとずっと妄想していたのです。

最近なんか、たまに男装ホストクラブに遊びに行くこともある。

女性が男の格好をしてるんだけど、それが中性的なカワイさがある超イケメンなのよ。

そんなこともあり、脇山さんが私を気に入って指名し続けてくれることが、何よりも嬉しいことだった。

だから、彼に徐々に惹かれるようになり、今では毎日店にトキメキながら出勤し、お客さんというより、一人の男として見るようになったいた。

それだけではない。

毎回来店時に私にピンクのバラを一輪持って来てくれるその優しさも嬉しかった。

「ピンクのバラには、“恋の誓い”っていう花言葉があるんだよ」

と脇山さんが優しくほほ笑みながら教えてくれたのです。

これって告白?それともプロポーズなのかな?

そんなマメな性格も相まって次第に本気で好きになっていったのです。

何度も言うが、最初は本当に客としてしかみていなかった。

だって、私にはネイルサロンを出す夢があるんだから。

「付き合って欲しい、君のためならなんでもしてあげたい。君の夢であるネイルサロンの開業資金は僕が出してあげるよ」

ただお客さんとして毎回指名してくれるだけでも嬉しかったのに、私とのお付き合いを望んだ上に、ネイルサロンの開業資金もサポートしれくれるとは。

私も超タイプの脇山さんが好きだったし、欲が深い女と思われるかもしれないけど、開業資金も出してくれるなんて、そんなオイシイ話があるならお付き合いもいいかも。

私も彼のためだったら何でもしてあげたい。

望むなら私の体も捧げる。

彼といるとまるで男装ホストクラブにいるみたいで、今では店に私の方がお客で逆に彼に接客されているみたいな感じになっている。

そんな彼との毎日がとても心地よかった。

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