マニアック

出会いがしらに…

この日。このあと起きる出来事を誰が想像できただろうか。
………

………

「マジかよ、アラサーで処女とかきっつー!」

 来たい訳でもなかったけれど、全く期待もしていない訳でもなかった合コンで、初対面の男の言葉にフリーズした。

 人は思わぬ出来事で、言葉に詰まるような場面で。

反応しきれないと指先まで冷えるものなのだと俯瞰ふかんする。

「あはは……」

と気のない愛想笑い。

 場の空気は嫌に澱んでいて、でもその一方で笑い声と妙な盛り上がりを見せる。

「ひどぉい、言い過ぎぃ」

と含み笑いをする女性陣と

「俺は関係ありませんし、あなたへ興味もありません」

と目を逸らす男性陣。

 どうしても私に合コンに出てくれとせがんだ後輩女子は

「先輩は純真無垢なんでこういう場がにがてなんですよぉ」

と笑っている。

 この子、マジでなんで私に声をかけたんだろう。

仕事で顔合わせるの、気まずくならない?

 不愉快さに言葉にできないそれが込み上げ、気まずさなんて感じないんだろうな、

私のことなんて虫程度にしか思っていないんだろうから、と推測。

 さて、この場をどう乗り切ろうかと頭痛がした時だ。
 

「そもそも人を露骨にけなす奴らと盛り上がって楽しいのかね。
あの子とか性格の悪さが顔に出ててキツいわー」

 反応待ちで、ダンマリな私をあれこれイジっていた例の男と後輩が突然の言葉にフリーズ。

 私自身、声に出してしまったかと焦ったけれど……

見知らぬ第三者は私達のテーブルの向かいにいた。

「あ、聞こえてた」

「お前、声でかい」

「いやそれを言ったらあの人らのがデカかったじゃん」

 いかにも仕事帰りのサラリーマン風の男性二人組。

 合コンをしていた全員の視線がそちらに集まるがどこ吹く風。

「ちょっとあんた何? 絡んで来んなよ」

 私に失礼なことを言った男が二人に詰め寄ろうとしたが、別の合コンメンバーが止める。

しかも、店内のあちこちから

「よく言ったぞー」

「うっせーんだよさっきから」

「小学生のイジメ修了のお知らせー」

覇気はきのない同意や管を巻いたような声が上がり、ちらほらと拍手。

「……くそっ!」

 居た堪れいたたまれなくなったようで、顔を真っ赤にして仲間の静止を振り切って店を出て行ってしまった。

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