タッくんは仕事でこちらに転勤してきたとのことだった。
「誰か、昔の友達に会わないかなって歩いてたら、サナちゃんに会えた」
嬉しそうに話す彼を見ていると、私も何だか嬉しなる。
「地元に残っている昔馴染みが結構いるから、タッくんが帰ったなら同窓会しないとね」
タッくんは皆から歓迎された。
おもしろいことに、タッくんに憧れていた女子は皆、思い出の彼の姿は私と同じだった。
タッくんは子どもの頃と変わらず優しくて親切だ。
困っているお年寄りを手伝っていたり、迷子の子に優しく話しかけている姿を何度も見た。
私はやっぱり今でも彼が好きだ。
好きだけど、気持ちは何だか伝え辛い。
相変わらずタッくんは女性から人気があるから。
「もうすぐお祭りだねえ」
ある日、道で出会ったタッくんと世間話をしていた時にそう言われた。
「そうだね。お祭りと言えば、2年生の時に一緒に行ったよね?」
「うん。その時、俺とサナちゃんでおそろいのキーホルダー買ったの覚えてる?」
「覚えてる覚えてる。可愛いキャラクターのやつ。あれ、もうボロボロになっていつの間にかなくなっちゃった」
私はそのキーホルダーをなくしてしまったことを、今さらながら後悔する。
「俺もなんだよね。良かったら、またおそろいで買おうか?」
「え?どういうこと?」
いつもはニコニコしているタッくんが、何だか照れたような顔で私から顔をそらす。
「無理にとは言わないけど…」
「ううん!買いたい!」
私は慌てて言った。
タッくんは驚いた顔で私を見る。
「私、あなたのこと好きだった。いや、今も好きなんだけど」
慌て過ぎて余計なことまで言ってしまう。