言葉を濁す遥香に「気になるならいつでも言って。あと、また遊ぼうよ」と彼女はアドレスと電話番号を教え、それから彼女のバイトしているらしい店の名刺を差し出した。
二日酔いの冷めやらぬ翌日、その名刺の店のホームページを検索するとすぐに見つかった。
最初の画面に大きく書かれた【SMクラブ】の文字に威圧されたがすぐにそれは好奇心に変わる。
高額のバイト代に惹かれてつい求人についてかかれたページを読み込んだ。
(よくわかんないけど…おもしろそう)
しかしそれよりもメリットを感じる部分が大きかったというだけだ。
ヘルスなので性器の挿入は無いこと、アパートから遠くもなく、大学が終わってからのバイトには丁度いい営業時間であること、それに何より彼女自身アブノーマルな性の世界に強い興味を持っていた。
既に働いている子の紹介、と言うことで簡単な面接だけで採用され、すぐに働き始めることとなった。
働く女性達は皆、何も知らずに入ってきた若い新人に教えるのが楽しいようで
「基本的な縛り方はね…」
「この道具、使い方分かる?」
「こうすると喜ばれるよ」
と指導してくれた。
あまりに気前よく教えてくれるものだから心配になって聞いたことがあった。
「色々教えていただけるのはありがたいですけど、もし先輩のお客さんが私についたりしたら…困りませんか?」
キャバクラでバイトしている大学の友達が
“新人の女に客を取られた”
と少し前に話していた。
相当苛立っていたようで、もしこのお店でそういうことが起これば自分は居づらくなるのでは、と心配しての質問だったが、在籍歴の長い女性達はその質問に笑ってあっけらかんと答えた。
「選ぶのは私達じゃなくてお客さんだし」
「それに色んな子と試してぴったり合う女王様見つけたいって人が殆どなんじゃないかなぁ」
「そうそう、SMは相性次第だから気にしないで自分のプレイをするだけよ」