マニアック

本屋のトイレで。

自分でも分が悪いとわかっているから、うまく言い返すことすら出来なかった。

でももし今バレてしまったら、警察ざたになってしまったら、卒論はおろか卒業だって出来ないかもしれないし、就職だって――

そう考えると目の前が真っ暗になって、何も言葉が出てこない。

男は何やら話しかけていたが、言っていることもちっとも理解できなかった。

「ほら、黙ってないで」

男に、手首をつかまれる。

まつりは、とっさにその手首を逆の手で掴んだ。

その行動に、男も驚いてまつりを見る。

馬鹿だとは自分でも思ったが、これしかないと思った。

「なんでもするから、見逃してください……!」

万が一にでも店員が来てしまわないように、まつりは声を潜めて懇願する。

とにかく、黙っていてもらうことが一番重要だった。

「なんでも?」

「な、なんでも……犯罪にならないことだったら……なんでもします……」

まつりの言葉に、男はくすりと笑った。

優しそうな顔なのに、それが今のまつりにはひどく意地悪く見える。

「じゃあ……ついてきて」

男に手首をひかれ、まつりは黙ってうなずいた。

今のまつりに出来ることは、ただ従順に、男の言うことを聞くことだけだった。

連れてこられたのは、本屋の最上階のトイレだった。

最上階は専門書が並ぶフロアで、店員の数も客の数も他に比べて少ない。

その割にトイレの数は多く、奥のトイレの周りには人気がなかった。

男性トイレに連れ込まれ、並んだ個室の一番奥に二人で入る。

フタのしまった便器に腰かけた男は、にこりとまつりに笑いかけた。

「わかるよね?」

いい人そうに見えたのに、全然そんなことはなかった。

今の自分の置かれた状況に絶望的な気持ちになるが、しかしまつりは従うしかない。

無言で男の足の間にしゃがみこみ、そっとジーンズのチャックを下した。

ボクサーパンツをずらし、男のペニスを取り出すと、それはすでに少し硬くなっている。

つんと漂ってくる男の匂いに、まつりは唇をかみしめた。

「どうしたの?」

まつりが動けない間にも、男はにやにやとした声を浴びせてくる。

知らない男のペニスを目の前に突き付けられ、まつりはぎゅっと目をつぶってペニスを上下に扱いた。

まつりの手の中で、みるみるうちにペニスは硬く、大きくなっていく。

いつの間にか先端からは透明な液があふれだし、まつりの手の動きと一緒に水音が響いた。

「もういいから、くわえて」

男の手が、まつりの後頭部を押してくる。

勃起したペニスの先端は先走りでてらてらと光り、小さなあながぴくぴくと動いている。

頭をペニスのぎりぎりまで押し付けられて、まつりはとうとう、唇を開いた。

ペニスの先端に唇をつけると、ぬるりと生々しい感触がする。

「うっ、ん……っ」

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